鍵裂かぎざき)” の例文
もう一人、中学の、くちゃくちゃの制帽と服で、鍵裂かぎざきだらけで、素足に高足駄を穿いた勇壮な少年がある。酒の席などでは閑却されたが雪代夫人の弟である。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
親仁おやじは郵便局の配達か何かで、大酒呑で、阿母おふくろはお引摺ひきずりと来ているから、いつ鍵裂かぎざきだらけの着物を着て、かかとの切れた冷飯草履ひやめしぞうりを突掛け、片手に貧乏徳利を提げ
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
山間僻地さんかんへきちのここらにしてもちと酷過ひどすぎる鍵裂かぎざきだらけの古布子ふるぬのこの、しかもおぼうさんご成人と云いたいように裾短すそみじか裄短ゆきみじかよごくさったのを素肌すはだに着て、何だか正体の知れぬ丸木まるき
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
正面まともに見れる肩のあたりにも、鍵裂かぎざきやら継接つぎはぎやらが、二つ三つならずかぞえられます。
手織縞ておりじまちやつぽいあはせそでに、鍵裂かぎざき出來できてぶらさがつたのを、うでくやうにしてふえにぎつて、片手かたてむかうづきにつゑ突張つツぱつた、小倉こくらかひくちが、ぐたりとさがつて、すそのよぢれあがつた痩脚やせずね
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)