すっぱ)” の例文
韓嵩のいっていることは、少しも詭弁きべんではありません。彼は都へ立つ前にも、口をすっぱくして、今のとおりなことを申し述べていました。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
アローは口をすっぱくして、いろいろ説いたが、どうしてもファラデーに俸給を受け取らせることが出来なかった。
「真剣な生活奮闘だ。我輩は中学校高等学校を通じて口のすっぱくなるほど説いた積りだが、君は分らんのか?」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
源兵衛『そなたが来るのを留守にしたのは、拠所よんどころない若衆会所の相談。それも御門徒の一大事についての談合と、道々も口をすっぱくして聞かしてやったではないか』
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
多年の食道楽くいどうらくのために病的過敏となった舌の先で、苦味にがいともからいともすっぱいとも、到底一言ひとことではいい現し方のないこの奇妙な食物のあじわいを吟味して楽しむにつけ
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼はそれを、或はすかし、或はおどし、色々に骨折って、三十分ばかりの間も、口をすっぱくして口説くどいた上、とうとう、半ば威圧的に、彼女をうなずかせて了いました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ここに林のごとく売るものは、黒く紫な山葡萄やまぶどう、黄と青の山茱萸やまぐみを、つるのまま、枝のまま、その甘渋くて、且つすっぱき事、狸がせて、兎が酔いそうな珍味である。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生徒の軽蔑し居る先生がいくら口をすっぱくして倫理を説くとも学校内のいたづら者が一人にても減るまじ。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
政吉が口をすっぱくして勧めても、母子は強情に受け取ろうとしなかったので、彼はしまいには疳癪を起して、その小判を引っ掴んでどこへか黙って出て行ってしまった。
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この頑迷固陋ころうな小仏蘭西人達は、のすべての大仏蘭西人達と同じように、容易に日常の主義を変えないことに、はげしい衿持きんじを持っているものと見え、コン吉とタヌが口をすっぱくし、甘くし
もし金のことで間違いが起ったら、自分達でひきうけるからと、口をすっぱくしていったが、それでも取らないので、仙吉が長屋を代表して預かっておく。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして無意識のうちに、梅のすっぱい味を想像し、口中につばをわかせて、渇を忘れてしまっていた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)