迂濶うっかり)” の例文
加之おまけみちが悪い。雪融ゆきどけの時などには、夜は迂濶うっかり歩けない位であった。しかし今日こんにちのように追剥おいはぎ出歯亀でばかめの噂などは甚だ稀であった。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
後家さんが時々来る旨を迂濶うっかり、お客に話したのを、例の通り顔剃りに来た芸妓が耳にするや憤然として理髪店を出て行ったが、じょ
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
半五「へい成程、あゝ悪いことを云った、そんな事とは知らず迂濶うっかりといったが、旦那おめえさんけば見す/\穽穴おとしあなちるので」
迂濶うっかり知らないなぞと言おうものなら、使い方を見せようと、この可恐おそろしい魔法の道具を振廻されては大変と、小宮山は逸早すばや
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あとをつけて出ると、むっとするほどのけむが向うから吹いて来たんで、こりゃ迂濶うっかり深入はできないわと云う腹もあって、かたがたうしろを向く途端とたんに、さっきの連中がもう、煙の中でかあん、かあん
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし……それにしても迂濶うっかりした事は尋ねられない。何しろ相手は腕の冴えた職人に在り勝ちな一種特別の神経の持主だ。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
清「此の野郎……此奴こいつのいう事ア迂濶うっかり本当にア出来ねえ、嘘をく奴は泥坊のはじまり、う泥坊に成ってるだ此の野郎」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それに迂濶うっかりするとひどい損をします。なにしろこの通り泥だらけで来るんですから、すっかり仕上げて見ないうちは、傷があるか血暈ちじみがあるか能く判りません。
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おや、迂濶うっかりだねえ。知らないのかい。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「だが、雪が降って食物くいものが無くなると、𤢖わろが山から里へ出て来ると云うじゃアないか。迂濶うっかり酔倒よいたおれている処を、さらって行かれちゃア大変だからね。ははははは。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何んでも水で殺すよりほかに仕方が無いと決心して、矢切の渡場わたしばで喜代松という船頭と共謀ぐるになっているとも知らず、迂濶うっかり乗った勇助を、川中でドブリを極めたのでございます。
しか対手あいては𤢖三人で、此方こっちは女一人、迂濶うっかり加勢に飛び出したら自分もんな酷い目に遭うかも知れぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これから二人でくのだが、私も今日昼過からうちを出たから屹度きっとっかあが捜しているに違いない、し人目に懸って引戻されるともう逢う事は出来ないから、迂濶うっかりとは行かれないから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
対手あいてよっては迂濶うっかり冗談も云えぬものだと、お葉は今更のように思い当った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
馬鹿にしちゃアいけねえ、本当だと思ってたのに洒落者しゃれもんだね、田舎者だって迂濶うっかりした事は云えねい……えゝ其方そちらの隅においでなさるお方、あなたは何ですかえ、矢張お医者さまでごぜえやすか
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
道中の事で気味が悪いから、迂濶うっかりと尋ねることも出来ません。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)