かゝ)” の例文
お小使はふろを立てない日に坊ちやんをつれて外湯へ行つたりなぞする外には、おくみの手で使ふかゝりが少しもないやうな日があつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
上下かみしもから小袖まで相当のものを買調かいとゝのえなければなりません、けれども若旦那のお買物に多分にかゝりますので、自分の支度金どころではありません
『中學も卒業せずに南米に行つたつて奈何どうなるもんか。それに旅費だつて大分かゝる。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
鏡子が巴里パリイに居た頃、自身達の本国に居た頃より遥かに多く月々のかゝりがるのを知らせて来る妹の家計を、下手であると怒つては出すのも出すのも妹を叱る一方の手紙だつたのを
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
もつとも、其間には、ところ/″\の舟場へも漕ぎ寄せ、洪水のある度に流れるといふ粗造な船橋の下をも潜り抜けなどして、そんなこんなで手間取れた為に、およそ三時間は舟旅にかゝつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
うだらう、家賃ばかりでも従来これまでの四倍からかゝるのだからな。』
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
唯一本の銚子に一時間もかゝりながら、東京へ行つてからの事——言語ことば可成なるべく早くあらためねばならぬとか、二人がまだ見た事のない電車への乘方とか、掏摸すりに氣を附けねばならぬとか
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
乳母と云ふ鏡子の望む方の事は月に二十円のかゝりが入ると云ふので靜の恩家おんかへの遠慮で実行する事が出来ずに、里へ預ける事になつた時、だ産後十七日ぐらゐ身体からだで神田の小川町へ
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
誠にわたくしはどうも申訳のない事をいたしました、あなた御立腹でございましょうが、あなたを私が見くびった訳でもなんでもない、実はその貴方におかゝりのかゝらんように種々いろ/\と心配致しまして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『何もその錢金のかゝこつえのだ。私は其麽者で無え。自分で宿料を拂つてゐて、一週間なり十日なり、無料たゞで近所の人達に聞かして上げるのだツさ。今のその、有難いお話な。』
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)