諸人しょにん)” の例文
こうした場合には狐が人間に化けたというような信じがたい話も、案外なんらの故障なしに諸人しょにんに受け入れられるものである。
火薬庫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御通行のおじゃまをして、恐縮千万なれど、ちと不幸ばしござって、今日は、当道場の例として、諸人しょにんに銭をまきおりまする。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのいえに従はねばならぬなり。同じく皆従ふなり。一人ひとりに従ふと諸人しょにんに従ふとの相違のみ。そのいづれかを選ぶべきやはこれその人の任意なり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
は、当御館おやかたにおかせられましては、このお庭の紅葉を、諸人しょにんに拝見の儀お許しとな、かねがね承ったでありまするで、戸外おもてから拝見いたしましてさえ余りのお見事。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「この霊地れいちへきて、奇怪なまねをするにっくいやつ、ことによったら、南蛮寺なんばんじにいるキリシタンのともがらかもしれぬ。いずれにせよ、ぶッぱなして諸人しょにんへの見せしめとしてくれる」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸人しょにんの為でございます、何卒なにとぞお命だけはお助け下さいますよう願い奉ります
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
五百は終日応接して、諸人しょにんの望にそむかざらんことを努めた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ある時、和尚さんが、お寺へ紅白のきれを、何ほどか寄進をして欲しいものじゃ、とおっしゃるんです。寺の用でない、諸人しょにん施行せぎょうのためじゃけれど、この通りの貧乏寺。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、諸人しょにんの説はういうことに一致した。虎ヶ窟に棲める𤢖の眷族けんぞくは、其数そのかずはたして幾人であるか判らぬが、さきの日の市郎の為にの女性の一人いちにんうしなったのは事実である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
八大竜王はちだいりゅうおう鳴渡なりわたりて、稲妻いなずまひらめきしに、諸人しょにん目を驚かし、三日の洪水を流し、国土安穏あんおんなりければ、さてこそ静のまいに示現ありけるとて、日本一と宣旨せんじたまわりけると、うけたまわそうろう。——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一念開悟、生命の活法を獲受して、以来、その法をもって、あまね諸人しょにんに施して、万病を治するに一点の過誤がない。世には、諸仏、開祖の夢想の灸ととなうる療術のやからは多いけれども。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)