見霽みはら)” の例文
森を高く抜けると、三国見霽みはらしの一面の広場になる。かっと射る日に、手廂てびさししてこうながむれば、松、桜、梅いろいろ樹のさま、枝のふりの、各自おのおの名ある神仙の形を映すのみ。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我里は木曾の谷の、名に負ふ神坂みさかの村の、さかしき里にはあれど、見霽みはらしのよろしき里、美濃の山近江おうみの山、はろばろに見えくる里、恵那えなの山近くそびえて、胆吹山いぶきやま髣髴ほのかにも見ゆ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
森を高く抜けると、三国さんごく見霽みはらしの一面の広場に成る。かっる日に、手廂てびさししてながむれば、松、桜、梅いろ/\樹のさま、枝のふりの、各自おのおの名ある神仙しんせんの形を映すのみ。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その内に、物見の松のこずえさきが目に着いた。もう目の前の峰を越すと、あの見霽みはらしの丘へ出る。……後は一雪崩ひとなだれにずるずると屋敷町の私の内へ、すべり込まれるんだ、とほっと息をした。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
がちがち震えながら、傍目わきめらず、坊主が立ったと思う処は爪立足つまだちあしをして、それから、お前、前の峰を引掻ひっかくように駆上かけあがって、……ましぐらにまた摺落ずりおちて、見霽みはらしへ出ると、どうだ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
屋根も柱も蜘蛛くもの巣のように狼藉ろうぜきとして、これはまた境内けいだいへ足の入場いればもなく、がけへかけて倒れてな、でも建物があった跡じゃ、見霽みはらしの広場になっておりますから、これから山越やまごしをなさるかた
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見霽みはらしでも御覧なさいよ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)