-
トップ
>
-
行衞
>
-
ゆくへ
雲往き
雲來り、やがて
水の
如く
晴れぬ。
白雲の
行衞に
紛ふ、
蘆間に
船あり。
粟、
蕎麥の
色紙畠、
小田、
棚田、
案山子も
遠く
夕越えて、
宵暗きに
舷白し。
雲飛は石を
奪はれて
落膽し、其後は
家に
閉籠つて外出しなかつたが、
石が
河に
落て
行衞不明になつたことを
傳へ
聞き、
或朝早く家を出で石の
落ちた
跡を
弔ふべく
橋上に
立て下を見ると、
河水清徹
おまゐりをして
下さいなと、
何かの
時に、
不思議にめぐり
合つて、その
養女からいはれたんですが、ついそれなりに
不沙汰でゐますうちに、あの
震災で……
養女の
方も、まるきし
行衞が
分りません。