螺旋ねじ)” の例文
その中に鉄煙管の吸口に純金の口金の付いたのがあって、その金の部分だけが螺旋ねじで取り外ずしの出来るようになっていた。
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「それが——、分らないんだ。番号札の一方の螺旋ねじ釘が外れていて、ぐらぐらと縦に揺れるもんだから、数字を読むことがまるで出来なかった——」
鳩つかひ (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
汽笛が鳴ってばたりと止んだ時は、さながら、時計の螺旋ねじゆるみきって、止まった刹那せつなのように気味悪く音もない。
悪魔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
六郎は飛付くように時計を取り上げて、その裏の螺旋ねじを引抜き、わけもなく表の硝子がらすを外してしまいました。
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
鉄の緊金や錆びた螺旋ねじの軋る騒々しい音で、市の反対側の端にいた立番の巡査までが、仮寝の夢を破られて、ハッと鉾を取りなおしざま、寝ぼけ声を張りあげて
室内しつないには螺旋ねじゆかめられた寐台ねだい数脚すうきゃく。そのうえにはあお病院服びょういんふくて、昔風むかしふう頭巾ずきんかぶっている患者等かんじゃらすわったり、たりして、これはみんな瘋癲患者ふうてんかんじゃなのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
切断していたこと……バンガロー風の二階の窓硝子ガラスを切って螺旋ねじ止めを外して忍び入ったこと……夫人と小間使は眠ったままの位置で絞殺されていたこと……重傷を
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
郵便馬車との衝突のために、車輪のが二本折れ、こしきがゆがんで螺旋ねじがきいていなかった。
先生の世界観がまたたきと共に変るように明るくなる。小野さんはまだ螺旋ねじから手を放さない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もし瓦斯ガス螺旋ねじでもゆるんでいるのではあるまいかと、とりあえず寝台ねだいを降りて座敷の瓦斯を検査したが、螺旋には更に別条なく、またから瓦斯のれるような様子もない、けれども
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今まで止まつて居た柱の時計の螺旋ねじを巻きながらふと自分は大それた事を思つた。其れは自然の則も無視することの出来るやうな力が自分の内に充満してゐることを信じたのであつた。
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
真鍮の金具類は非常に頑丈に出来ているものであるから、ちっとのことでは動くはずがないので、螺旋ねじが動揺したぐらいのことで締め金がはずれたとは、僕にはどうも信じられなかった。
前二手で柄を持ち定めまた廻すは甚だ困難ゆえ、ついに一の後手(猴は足なく前後四手あり)で箒を持ち螺旋ねじを合わすに並みならぬ根気を要したが、やっと合せて速やかに捻じ入れしまった。
螺旋ねじまわしと二三の螺旋を手洗い台の上で見つけました。それから前の晩にはよほどひどく煙草を吸ったらしい紙を見ました。ここに暖炉の中からひろい出した葉巻の吸いさしが四つあります」
入院患者 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
運転している政治のメカニズムの大切な螺旋ねじであることを自覚した。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
その手に、太いスパナー(鉄の螺旋ねじまわし)が握られていた。
太平洋魔城 (新字新仮名) / 海野十三(著)
余り小さくて、可愛く出来ているので、指先でいじくっていますと、シルクハットが螺旋ねじのようになっていてくるくると廻ります。廻しているうちにぽつりと、とれてしまいました。
耳香水 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
「もし螺旋ねじがゆるんでいくのならば、あしたの昼じゅうにあいてしまうでしょうが……。私はけさ力いっぱいに捻じ込んでおいたのが、今夜もそのままになっているのを見ておいたのです」
どこから手を入れて螺旋ねじをかけるのか解らないが、旧式な唐草模様の付いた、物々しい恰好の長針と短針が、六時四分を指し示しつつ、カックカックと巨大な真鍮の振子球ふりこだまを揺り動かしているのが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その時島田は洋燈の螺旋ねじを急に廻したと見えて、細長い火屋の中が、赤い火で一杯になった。それに驚ろいた彼は、また螺旋を逆に廻し過ぎたらしく、今度はただでさえ暗い灯火あかりをなおの事暗くした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕は大きい螺旋ねじや鍵止めを調べてみた。