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薫風
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くんぷう
ふりがな文庫
“
薫風
(
くんぷう
)” の例文
繁華の
橋上
(
きょうじょう
)
に
乗込
(
のりこみ
)
の役者を迎ふる雑沓の光景(第二図)より、やがて「
吹屋町
(
ふきやまち
)
を
過
(
すぐ
)
れば
薫風
(
くんぷう
)
袂
(
たもと
)
を引くに似た」る
佐野川市松
(
さのがわいちまつ
)
が
油店
(
あぶらみせ
)
。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しばらく入口で
躊躇
(
ちうちよ
)
した末、八五郎に
促
(
うなが
)
されて、大輪の白百合のやうな感じのする若い娘が、一陣の
薫風
(
くんぷう
)
と共に入つて來ました。
銭形平次捕物控:193 色若衆
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
俳句の季題の「おぼろ」「花の雨」「
薫風
(
くんぷう
)
」「初あらし」「秋雨」「村しぐれ」などを外国語に翻訳できるにはできても
涼味数題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
翌る朝は、夜の明けないうちから、
津軽平
(
つがるだいら
)
の何十里に、笛太鼓の音が流れていた。初夏の
薫風
(
くんぷう
)
に白いつばさを拡げて、青田の上を
白鷺
(
しらさぎ
)
が群游していた。
鬼
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
みゑ子が手離しで歩きだしたと言って笑い、転んだと言っては騒ぎ、家のなかはいつも
薫風
(
くんぷう
)
瑞雲
(
ずいうん
)
が漂った。
盗難
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
▼ もっと見る
すると、右門は縁側でひと吹き千両の
薫風
(
くんぷう
)
に吹かれながら、湯上がりの足のつめをしきりとみがいていましたが、にたりと微笑すると、いたわるようにいいました。
右門捕物帖:04 青眉の女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
おのずから
薫風
(
くんぷう
)
の生ずる有様を
如何
(
いかん
)
ともすることができませんでした。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一、その外
霞
(
かすみ
)
、
陽炎
(
かげろう
)
、
東風
(
こち
)
の春における、
薫風
(
くんぷう
)
、
雲峰
(
くものみね
)
の夏における、露、霧、
天河
(
あまのがわ
)
、月、
野分
(
のわき
)
、
星月夜
(
ほしづくよ
)
の秋における、雪、
霰
(
あられ
)
、氷の冬におけるが如きもまた皆一定する所なれば一定し置くを可とす。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
ガラツ八の八五郎は、
薫風
(
くんぷう
)
に鼻をふくらませて、明神下の平次の家の、庭先から顎を出しました。いとも
長閑
(
のどか
)
な晝下りの
一齣
(
ひとこま
)
。
銭形平次捕物控:290 影法師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
すべてのエキゾティックなものに
憧憬
(
どうけい
)
をもっていた子供心に、この南洋的西洋的な香気は未知の極楽郷から遠洋を渡って来た一脈の
薫風
(
くんぷう
)
のように感ぜられたもののようである。
コーヒー哲学序説
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
月はまだ五月初旬の
爽涼
(
そうりょう
)
、若者の心そのままな
薫風
(
くんぷう
)
が
袂
(
たもと
)
を打つ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
薫風
(
くんぷう
)
に素袷の袂を吹かせて、江戸の風物は一番嬉しいときですが、仕事となると、町々の青葉にも、
山時鳥
(
やまほとゝぎす
)
にもこだはつては居られません。
銭形平次捕物控:275 五月人形
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
薫風
(
くんぷう
)
に懷ろを
膨
(
ふく
)
らませて、八五郎はフラリと入つて來ました。相變らず寢起の良ささうなのんびりした顏です。
銭形平次捕物控:302 三軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
初夏の
薫風
(
くんぷう
)
に歌う鳥のように、心から
湧
(
わ
)
き出ずる旋律を、すばらしい天才で処置し、五線紙に留めて百千年の後に
遺
(
のこ
)
した人類への恩恵そのものだったのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
若黨
擦
(
ず
)
れがして居ないばかりでなく、傍に居る者に、五月の
薫風
(
くんぷう
)
のやうに爽やかさを感じさせるのです。
銭形平次捕物控:199 蹄の跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
つまらない噂を立てられると、お互の爲にもならないから——そんな念入りな事まで言つて、美しいおもかげだけを殘して、一陣の
薫風
(
くんぷう
)
のやうに立去つたのでした。
銭形平次捕物控:037 人形の誘惑
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
さう言つて、一陣の
薫風
(
くんぷう
)
を殘して、庭の方へ飛んで行くお富を見送りながら、平次は手代の彌八——お君の婿になる筈だつた若い彌八を、四疊半に
誘
(
さそ
)
ひ入れました。
銭形平次捕物控:287 血塗られた祝言
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ガラッ八の八五郎が、
薫風
(
くんぷう
)
に
懐
(
ふとこ
)
ろを
朶
(
はら
)
ませながら、糸目の切れた
奴凧
(
やっこだこ
)
のように飛込んで来たのです。
銭形平次捕物控:277 和蘭の銀貨
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
木綿物の
継
(
つぎ
)
の当った
袷
(
あわせ
)
も、無造作に後ろで束ねた髪も、浅ましい限りですが、ほんの少しの身じろぎにも、
自
(
おのずか
)
ら
薫風
(
くんぷう
)
が生じそうで、この娘の魅力はまことに比類もありません。
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
江戸の町が青葉で
綴
(
つゞ
)
られて、
薫風
(
くんぷう
)
と
五月
(
さつき
)
の陽光が長屋の隅々まで行き渡るある朝のこと
銭形平次捕物控:199 蹄の跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
晴れあがつた五月の空、明神下のお長屋にも、
爽
(
さは
)
やかな
薫風
(
くんぷう
)
が吹いて來るのです。
銭形平次捕物控:322 死の秘薬
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
薫
常用漢字
中学
部首:⾋
16画
風
常用漢字
小2
部首:⾵
9画
“薫風”で始まる語句
薫風陣
薫風一扇
薫風忽送他山雨