薄化粧うすげしょう)” の例文
まげ女優巻じょゆうまきでなく、わざとつい通りの束髪そくはつで、薄化粧うすげしょう淡洒あっさりした意気造いきづくり形容しなに合せて、煙草入たばこいれも、好みで持つた気組きぐみ婀娜あだ
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だから見苦しいことのないように、髪の乱れたのは結い直してやり、歯を染めていたのは染め直してやり、稀には薄化粧うすげしょうをしてやるような首もある。
うちでは食卓の上に刺身だの吸物だのが綺麗きれいに並んで二人を待っていた。お兼さんは薄化粧うすげしょうをして二人のお酌をした。時々は団扇うちわを持って自分をあおいでくれた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
青物屋とか酒屋とか、ちょっと其処そこらへ小買物に出るのでも、彼女は身綺麗なたしなみを怠らなかった。いや、貧しくなればなる程、墨江は細心に、薄化粧うすげしょうや襟元に気をつけた。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
髪の結様ゆいようどうしたらほめらりょうかと鏡にむかって小声に問い、或夜あるばん湯上ゆあがり、はずかしながらソッと薄化粧うすげしょうして怖怖こわごわ坐敷ざしきいでしが、わらい片頬かたほに見られし御眼元めもと何やらるように覚えて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お君はけと云って差出された座蒲団ざぶとんより膝薄ひざうすう、そのかたわらへ片手をついたなりでいたのである。が、薄化粧うすげしょうに、口紅くちべにく、目のぱっちりした顔を上げて
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
町家の隠居所でもありそうな清洒せいしゃな門を開けて、訪れると、奥で聞えていた陽気な女達の声がやんで、簀戸すどの蔭から四十前後の薄化粧うすげしょうした妻女が、何気なく出て来たらしいが
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は吃驚びっくりしたように、薄化粧うすげしょうを施こした彼女の横顔を眺めた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)