葦毛あしげ)” の例文
通りのまんなかには、二頭立の葦毛あしげ逸物いちもつをつけた紳士用のぜいたくな四輪馬車が立っていたが、乗り手はいなかった。
また殿しんがりで敵に向いなさるなら、鹿毛かげか、葦毛あしげか、月毛か、栗毛か、馬の太くたくましきにった大将を打ち取りなされよ。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
二十四本背に差したるは切斑きりふの矢、重籐しげとうの弓を小脇にかいこんで、乗る馬は連銭葦毛あしげあぶみをふんばって声をとどろかせた。
「まっ先にきた小桜縅こざくらおどしのよろい着て葦毛あしげの馬に乗り、重籐しげどうゆみを持ってたかの切斑きりふを負い、くわがたのかぶとを馬の平首につけたのはあれは楠正行くすのきまさつらじゃ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「九郎か。——大工棟梁に、葦毛あしげ吹雪ふぶきと、栗毛の星額ほしびたいとを取らせる。そちが行って、その馬を、これへ引いて来い。——馬を引いて、棟梁どもに与えよ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おいイワン。おれに穀物を半分おくれよ。おれは道具なんか貰おうとは思わない。あの葦毛あしげの馬を一匹貰おう。あれはお前の畑仕事にはちっと不向きのようだから。」
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
既に父子あだとなりて引き分れ候上は、たとい父にておわし候とも城に入れんこと思いも寄らずと云って、門を閉ざし女房共に武装させて、うまやにいた葦毛あしげの馬を、玄関につながした。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
演技場の真中には今、中位の象かと思われる巨大な白葦毛あしげの挽馬が、手綱も鞍も何も着けずに出て来て、小さなぶちのテリア種の犬と鼻を突き合わせて何かひそひそ話をしているていである。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すると馬は——馬車をいていた葦毛あしげの馬はなんとも言われぬいななきかたをした。何とも言われぬ?——いや、何とも言われぬではない。俺はその疳走かんばしった声の中に確かに馬の笑ったのを感じた。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、馬に鞍を置いてしまうと、正勝と平吾へいご松吉まつきちの三人の牧夫は銘々に輪になっている細引を肩から袈裟けさにかけた。そして、正勝は葦毛あしげの花房に、平吾は黒馬あおに、松吉は栗毛くりげにそれぞれまたがった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
駒は、桜田の御厩おうまやから借りて来た葦毛あしげだった。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
ところが、いまは不思議にも、そうした大きな荷馬車に、やせた小さな、葦毛あしげの百姓馬がつけてあった。
間もなく輿こし駕籠かごの行列につづいて、武者ぶりよい男が、二、三頭の鹿毛かげ葦毛あしげの駒を曳いて出て行った。武者たちは長門守の顔を見ると馬の口輪を片手に、辞儀して通った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隊長両角豊後守虎定は今はこれまでと桶皮胴の大鎧に火焔頭かえんがしらの兜勇ましく逞しき葦毛あしげに跨り、大身の槍をうちふって阿修羅の如く越兵をなぎたおしたが、槍折れ力つきて討死した。
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
うまやからわしの葦毛あしげを曳いて来い」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)