董卓とうたく)” の例文
「おうっ、おうっ。——あれに見える者こそまさしく敵の総帥董卓とうたくだ。彼奴きゃつの姿を目前に見て、空しくおられようか。続けや者ども」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『通俗三国志』に曹操そうそう董卓とうたくを刺さんとして成らず。故郷に逃げ帰る途中関吏に捕われしを、陳宮これを釈し、ともに走って、三日の暮方に成皐に到る。
徳川の一門にも随分忠義の国これ有り、加薩仙肥など頼母たのもしく相見え候えども、まるにこれらへ御委任され候わば、やはり義仲よしなかならざれば董卓とうたくに御坐候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彗星見えて董卓とうたくの乱ありといい、『晋陽秋しんようしゅう』の書に、諸葛亮しょかつりょうの卒時、赤き彗星ありという。
妖怪学一斑 (新字新仮名) / 井上円了(著)
魯鈍なる群衆の雑踏を見ては、私に一中隊の兵士があれば彼らを蹂躪じゅうりんすることができるなどと思った。私の目の前をナポレオンと董卓とうたく将門まさかどとの顔が通っては消えた。強者になりたい。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そうして董卓とうたく貂蝉てんぜんのために確実に殺された。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
汝の悪は、王莽おうもうに超え、汝の姦佞かんねいなことは、董卓とうたく以上だ。いまに見よ。天下ことごとく汝をころして、その肉をくらわんと願うであろう
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「安帝永初二年正月、大白昼見えしことあり。これ、とう氏の盛んなる兆しとなせり」『続漢書』に、「彗星見えしことあり。これ、董卓とうたく乱をなすの兆しとなせり」『晋陽秋しんようしゅう』の書に
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
これなん先頃から洛陽郊外の澠池べんちに兵馬をめたまま、何進が再三召し呼んでも動かなかった惑星わくせいの人——西涼せいりょう刺史しし董卓とうたくであった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
董卓とうたくはその後、澠池べんちの兵陣を、すぐ城外まで移してきて、自身は毎日、千騎の鉄兵をひきつれて市街王城をわが物顔に横行していた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それがしは、衛国えいこくの生れ、楽進がくしんあざな文謙ぶんけんと申す者ですが、願わくば、逆賊董卓とうたくを、ともに討たんと存じ、麾下きかに馳せ参って候」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王法にしんなし、諸将はただよく職分に尽せ。いま魏の曹操は、朝権を奪って、その罪のはなはだしさ、かの董卓とうたくにもこえるものがある。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時の大臣おとどともあろう方々が、女童おんなわらべの如く、日夜めそめそ悲嘆しておらるるのみで董卓とうたく誅伏ちゅうふくするはかりごとといったら何もありはしない。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
董卓とうたくの変このかた、大小の豪傑は、実に数えきれぬほど、輩出しております。わけても河北の袁紹えんしょうなどは、そのうちでも強大な最有力であったでしょう。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後、董卓とうたく出でて、ひとたび治まるも、朝野の議をみだりにわたくしなし、四こうの乱、ついで起り、あわれ漢帝を民間に流浪させ参らせ、生民せいみん溝壑こうがくに追い苦しむ
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにつけても、董卓とうたくがこの都を捨てて、長安へ遷都をいたあの時の乱暴さと、すさまじい兵乱の火が、帝のお胸に、悔恨となってひしと思い起された。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もういうまい。……じゃあかねて話してある通り、また近いうちに、董卓とうたくを邸へ招くから、おまえはけんをこらして、その日には歌舞吹弾もし、董卓の機嫌もとってくれよ」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九歳の時董卓とうたくに擁立されて、万乗の御位について以来、戦火乱箭らんせんの中に幾たびか遷都し、荊棘けいきょくの道に飢えをすら味わい、やがて許昌に都して、ようやく後漢の朝廟に無事の日は来ても
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「劉岱は、むかし兗州えんしゅうの刺史であった頃、虎牢関ころうかんの戦いで、董卓とうたくと戦い、董卓をさえ悩ましたほどの者である。決してかろんずる敵ではない。それさえわきまえておるならば行くがよい」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時、曹操は、まだ白面の一志士であって、洛陽らくようの中央政府の一小吏に過ぎなかったが、董卓とうたくを暗殺しようとして果たさず、都を脱出して、天下に身の置き所もなかったお尋ね者の境遇だった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)