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萠
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も
ふりがな文庫
“
萠
(
も
)” の例文
川中島の
洲
(
す
)
を
繞
(
めぐ
)
る疎林や、丘の草にも、
仄
(
ほの
)
かな緑が
萠
(
も
)
え出して、信濃の春は、
雪解
(
ゆきげ
)
を流す
千曲
(
ちくま
)
川の早瀬のように、いっさんに訪れて来た。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四月の陽は縁から雨落に這つて、江戸の櫻ももうお仕舞ひ、狹い庭に草の芽が
萠
(
も
)
えて、蟻はもう春の營みに、忙しい活動を續けて居ります。
銭形平次捕物控:252 敵持ち
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこは空気が陽にあたためられた湯のように温かく、
萠
(
も
)
え出た草の芽と若葉の香が、むっとするほど刺戟的に匂っていた。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
草は丘の斜面で春の炎のように燃えたっている——「最初の雨にうながされて草ははじめて
萠
(
も
)
えそめる〔原文ラテン語〕」
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
同一の環境の下に
生
(
お
)
い
出
(
いで
)
ても、多様多趣の形態を取って
萠
(
も
)
え出ずるというドフリスの実験報告は、私の個性の欲求をさながらに
翻訳
(
ほんやく
)
して見せてくれる。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
おそい
蕾
(
つぼみ
)
もあった。蕾は、むすめの乳首のようだ。お高は、その
薪
(
まき
)
のような梅の木にも、そんな
萠
(
も
)
える力があるのかと何だか恥ずかしいような気がした。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
次に國
稚
(
わか
)
く、
浮
(
う
)
かべる
脂
(
あぶら
)
の如くして
水母
(
くらげ
)
なす
漂
(
ただよ
)
へる時に、
葦牙
(
あしかび
)
五
のごと
萠
(
も
)
え
騰
(
あが
)
る物に因りて成りませる神の名は、
宇摩志阿斯訶備比古遲
(
うましあしかびひこぢ
)
の神
六
。次に
天
(
あめ
)
の
常立
(
とこたち
)
の神
七
。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
初夏の空美しく晴れ崖の雑草に青々とした芽が
萠
(
も
)
え
出
(
い
)
で
四辺
(
あたり
)
の木立に若葉の緑が
滴
(
したた
)
る頃には
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
木はまだ青葉にはなっていなかったが、芽は既にうすい影を落すくらいには
萠
(
も
)
え出ていて、一面に日の光をうけて緑色に輝いていた。古い、茶色の落葉に半ば
埋
(
うず
)
まった、苔むした岩があった。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
萠
(
も
)
え出でんとする芽は、その重みの下に押し
潰
(
つぶ
)
される。人の心は息がつけなくなる。ただ
首垂
(
うなだ
)
れて、おのれの停滞した存在を見守るのほかはない。生命の力は
萎微
(
いび
)
し、生きんとする意力は鈍ってくる。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
で蕭然たるうちに物皆
萠
(
も
)
ゆる生氣は地殼に鬱勃としてゐる。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
萠
(
も
)
やせぬか
おさんだいしよさま
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
「萬七親分もさう考へたことだらうな。でも、草がよく
萠
(
も
)
えてゐるのに、石などを轉がした跡はないぢやないか」
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
河原はいちめんに草が
萠
(
も
)
え、
葦
(
あし
)
の芽がつんつんと伸びている。俗にそこは「水車場」といわれるが、水車はない、あったとすればずいぶん昔のことだろう。
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もし森が伐りはらわれるとしても、あとから
萠
(
も
)
え出す新芽と茂みとはかれらに隠れ場をあたえ、その数は前よりもふえる。ウサギを生かしておけないような田舎は実にあわれむべき田舎にちがいない。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
妹
(
いも
)
が垣根の草も
萠
(
も
)
ゆらん
日本名婦伝:小野寺十内の妻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
縁側は見通し、庭も廣々として、滿開の櫻の外には、まだ
萠
(
も
)
え初めぬ草地にさす影もありません。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
春とはいえまだ草の芽が微かに
萠
(
も
)
えはじめたばかり、広い空地は荒涼と枯れている、そこへ色彩華やかな乙女たちが駒を揃えたのだから、その派手なことはちょっと類がなかった。
粗忽評判記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
塔の前の、
萠
(
も
)
え始めた若草の上に、多見治はどつかと坐つて、自分の腕を後ろ手に廻すのでした。
銭形平次捕物控:249 富士見の塔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし芽も
萠
(
も
)
えぬうちに
摘
(
つ
)
んで捨てた。自分のたつきの苦しいなかで人に貢いだ。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
岩蔭に
萠
(
も
)
え出る若草か、それともひるま陽に暖められた岩が匂うのか、極めてほのかではあるが、それはいかにも季節の変ったことを告げるかのように、深く、胸の奥までしみとおった。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
萠
(
も
)
え始めた若葉の上、
連翹
(
れんげう
)
が上から差しのぞいて、淡い春の陽、遠卷にした野次馬の眼にも、荒筵からはみ出した白い脛と、踏み脱いだ下駄が、赤い鼻緒を下にして、八文字に飛散つてゐるのが
銭形平次捕物控:250 母娘巡礼
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
萠
(
も
)
え出した草地ですよ」
銭形平次捕物控:300 系図の刺青
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
萠
漢検準1級
部首:⾋
11画
“萠”を含む語句
下萠
留萠
萠黄
萠芽
萠黄色
若萠
萠葱
萠黄縅
薄萠黄
幌萠
萠出
萠芽期
萠黄唐草
萠黄緞子
萠黄股引
萠黄金襴