)” の例文
同じ歸りの列車に乘つた連中も或者は大磯やさき邊を通りがけに局長とか社長とかの別莊を訪問しやうとて下車したものも多かつた。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
明智光秀がちまきを去らずに啖つたのなんぞは、正に光秀が長く天下を有するに堪へぬ事を語つてゐると評されても仕方の無い事である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
彼等は未来の健康のため、一夏ひとなつさきに過すべく、父母ふぼから命ぜられて、兄弟五人で昨日きのうまで海辺うみべけ廻っていたのである。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
眉山の自殺してから間もなく、さき海岸の獨歩の病室で、「この龍土會の會員の中で、誰れが眉山の次ぎに死ぬだらう」
君の所要は、先月さきで物故した一文士に関する彼の感想を聞くにあった。彼は故人について取りとめもない話をした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
みやますみれいむらさき色、白りんどうの気高けだかい花、天狗てんぐ錫杖しゃくじょう松明たいまつをならべたような群生ぐんせい、そうかと思うと、弟切草おとぎりそうがやのや、蘭科植物らんかしょくぶつのくさぐさなどが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことにこの別荘地帯はさきでも早く開けた方で、古びた家が広々と庭を取って、ポツン/\と並んでいる上に、どれも之も揃って空家と来ているので、誰一人応ずる者はない。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
震災記念というところから、小山家ではさきにある製糸工場内の庭に喜代野さんの胸像を置き、その台石にこのことばを刻みつけて、いささかなき人をしのぶたよりとしたものです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
雑誌の盟主であるR先生の相模さがみさきの別荘に、その日同人の幹部の人達が闘花につめかけてゐるので、私は一刻も早く一部始終を報告しようと思つて、その足で東京駅から下り列車に乗つた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
夜詣よまいりにさせる社務所の
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
余はほとんどがけと共にくずれる吾家わがやの光景と、さきで海に押し流されつつある吾子供らを、夢に見ようとした。雨のしたたか降る前に余はさいに宛てて手紙を出しておいた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ヶ崎さきにいる子供の安否についても一方ひとかたならぬ心配をしたものらしかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)