翁格子おきなごうし)” の例文
くすんだ色の浜縮緬はまちりめんの座敷着に翁格子おきなごうしの帯をしめ、島田くずしに結いあげた頭を垂れて、行灯のそばに、じっとうつむいてすわっていたが
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
と柳の眉の、おもて正しく、見迎えてちょっと立直る。片手もほっそり、色傘を重そうにいて、片手に白塩瀬しろしおぜ翁格子おきなごうし、薄紫の裏の着いた、銀貨入を持っていた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お村の姿なりは南部の藍の乱竪縞らんたつじま座敷着ざしきぎ平常着ふだんぎおろした小袖こそでに、翁格子おきなごうし紺繻子こんじゅすの腹合せの帯をしめ、髪は達摩返しに結い、散斑ばらふくし珊瑚珠さんごじゅ五分玉ごぶだまのついた銀笄ぎんかんし、前垂まえだれがけで
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お夏は衣紋えもんかけにかけてあった、不断着の翁格子おきなごうしのを、と笑いながらいったが、それは串戯じょうだん。襟をあたって寒くなった、と鏡台をわきへずらしながら自分で着た。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と奥から出ましたお村は袋物屋の女房には婀娜あだ過ぎるが、達摩返しに金のかんざし、南部のあい子持縞こもちじま唐繻子とうじゅす翁格子おきなごうしを腹合せにした帯をしめ、小さな茶盆の上へ上方焼かみがたやきの茶碗を二つ載せ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
月出でたらば影動きて、衣紋竹えもんだけなる不断着の、翁格子おきなごうしまがきをたよりに、羽織の袖に映るであろう。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かた/\の方は南部の乱立らんたつあらっぽい縞の小袖、これは芸妓の時の着替をふだん着に卸したと云うような著物きものに、帯が翁格子おきなごうしと紺の唐繻子とうじゅすと腹合せの帯を締めて、丸髷に浅黄鹿子あさぎかのこの手柄が掛って
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
微笑ほほえみながら、濃い茶に鶴の羽小紋の紋着もんつき二枚あわせ藍気鼠あいけねずみの半襟、白茶地しらちゃじ翁格子おきなごうしの博多の丸帯、古代模様空色縮緬ちりめん長襦袢ながじゅばん、慎ましやかに、酒井に引添ひっそうた風采とりなりは、左支さしつかえなくつむりが下るが
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「御免なさいまし。」と抱いて出た掻巻の、それもと浅黄の派手な段鹿子だんかのこであったのを、萌黄もえぎと金茶の翁格子おきなごうしの伊達巻で、ぐいとくびった、白い乳房を夢のようにのぞかせながら、トひざまずいてお孝の胸へ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)