縦令たと)” の例文
旧字:縱令
やよ聴水。縦令たとひわれ老いたりとて、いずくンぞこれしきの雪を恐れん。かく洞にのみ垂籠たれこめしも、決して寒気をいとふにあらず、獲物あるまじと思へばなり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
あるいは曰く、「惹爾日ジョルジ公あり、汝の強敵なり」と。彼泰然として曰く、「否々我往かん、縦令たとい惹爾日公雨の如く九日九夜降り続きたりとて何かあらん」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
又「一千一夜物語」の完訳は風俗上許し難い。縦令たと私版しはんであるとしても、公衆道徳をきずつけるおそれある以上はバ氏に罰金を課するが至当だ」と云ふやうな調子であつた。
学校がつこう卒業そつげふ証書しようしよが二まいや三まいつたとてはなたしにもならねばたかかべ腰張こしばり屏風びやうぶ下張したばりせきやまにて、偶々たま/\荷厄介にやつかいにして箪笥たんすしまへば縦令たとへばむしはるゝともたねにはすこしもならず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
彼がウオムスの大会において訊問せられんとするや、人その行を危ぶむ。彼昂然こうぜんとして曰く、「否々我かん、悪魔の数縦令たとい屋上の瓦より三倍多きも何ぞ妨げん」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
いふ時鷲郎が後より、黄金丸は歩み来て、呵々からからと打笑ひ、「なんじ黒衣。縦令たとひ酒に酔ひたりともわがおもては見忘れまじ。われは昨日木賊とくさヶ原はらにて、爾に射られんとせし黄金丸なるぞ」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
これこそわれから死を求むる、火取虫ひとりむしよりおろかなるわざなれ。こと対手あいては年経し大虎、其方は犬の事なれば、縦令たと怎麼いかなる力ありとも、尋常にみ合ふては、彼にかたんこといと難し。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)