縄目なわめ)” の例文
旧字:繩目
が、その縄目なわめをうけた姿を見たら、急に自分で、自分がいじらしくなって、思わず泣いてしまったと、まあこう云うのでございますがな。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
民蔵は縄目なわめにかけた伊那丸を、梅雪入道の前へひきすえた。拝殿の上から、とくと、見届みとどけた梅雪は、大きくうなずいて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、もし悪いことをして来た人で、お役人に尋ね出されるようなことになると、お徳さんや蔵太郎さんにまで、縄目なわめがかかるようなことになりはしないか知ら」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分らの解放せられた喜びを忘れて婦人の解放を押え、あまつさえ昔の五障三従ごしょうさんしょう七去説しちきょせつ縄目なわめよりも更に苛酷かこくな百種のなかれ主義を以て取締ろうというのは笑うべき事である。
婦人と思想 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
由なき戦を起されて縄目なわめの耻を受けられたのは笑止しょうしでござると云うと、いや/\、某は天下の形勢を考え、徳川殿を亡さずんば豊臣家のために宜しからずと思案いたし
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして、知らぬ間に、彼も神谷と同じ縄目なわめにかかって、こうしてころがされていたのに違いない。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私は、しくじりたくなかった。よしんばしくじっても、そのあと、そ知らぬふりのできるような賢明の方法をえらばなければ。未遂で人に見とがめられ、縄目なわめの恥辱を受けたくなかった。
狂言の神 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そうでなければ、ボジャック氏は、今ごろは縄目なわめはじをうけていたわけだ
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おしろちかくをうろついているとは、不敵なやつ。尋常にせねばなわをうつぞ、甲斐源氏かいげんじ御曹司おんぞうし縄目なわめを、はじとおもわば、神妙しんみょうにあるきたまえ——」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うむ、僅か三十文の銭のために縄目なわめの恥にかかるのはいやじゃ、この一腰ひとこし抵当かたにとってくれ」
が、いくら身悶みもだえをしても、体中からだじゅうにかかった縄目なわめは、一層ひしひしと食い入るだけです。わたしは思わず夫の側へ、ころぶように走り寄りました。いえ、走り寄ろうとしたのです。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おまえたちは、名もない雑人ぞうにんのくせにして、びすてにしたり、縄目なわめにかけるというのはなんという情けしらず、けっして、ご無礼ぶれいしてはなりませぬぞ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐにも縄目なわめゆるしてやると云った。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
(たとえそそのかす者があっても、ゆめ、太刀習いなどなさるまいぞ。親兄弟の後生ごしょうを念じ、髪を下ろして、再び縄目なわめなど尼に見せてくださるなよ)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なに、朱武と楊春の二頭目が自分から縄目なわめを望んでこれへ来たと。はてなあ。そいつはどうも眉ツバものだが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武者たちは、顔見あわせて、かれの弁舌に、ふと、誘惑ゆうわくをおぼえた様子だったが、組頭くみがしらかと見える男は、突然、かれの縄目なわめを自分の手に持ち直して、どなりつけた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安楽房は、縄目なわめをうけ、白洲に坐ると、すべてを隠さなかった。ありのままにいった。そして
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、彼の縄目なわめ
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)