つづり)” の例文
会員の名札はなるほど外国流のつづりが多い。国沢君は大きな本をひろげて、余の姓名を書き込ました上、是公に君ここへと催促した。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ノート?」信一郎は、不審いぶかりながら、トランクき廻した。いかにもトランクの底に、三じょうつづりの大学ノートを入れてあるのを見出みいだした。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この Abe と云うのは元来、亜米利加アメリカ式のつづりにあるし、それに亜米利加アメリカから来た、一通の手紙と云うのが、今回の大事件の端緒でしたからな。
れが文字とは合点がてんかぬ。二十何字なんじを覚えて仕舞しまうにも余程手間がかかったが、学べば進むの道理で、次第々々に蘭語のつづりわかるようになって来た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼らは一息にふたつづり大判の綴込をかたづけた。そして少しのろのろと、三つめの薄い覚え書を読み合せてしまうと佐々は、いかにも重荷の下りた風で
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その面が出はしまいかと気にしながら、古本古雑誌の前に踞込しゃがみこんで、おやすく買求めて来ましたのが、半紙つづり八十枚ばかりの写本、題して「近世怪談録」という。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
居士は常にそれに対して反覆丁寧なる返書をくれた。それは巻紙の事もあったが、多くは半紙もしくは罫紙けいしを一つづりにし切手を二枚以上ったほどの分量のものであった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
彼は机の上に散らかってる幾つづりかの紙を引っつかみ、それをひもゆわえ、帽子と外套とを取り、外に出かけた。廊下で、アンナの室のとびらに近づくと、恐れに駆られて足を早めた。
負わされているのでね。……ところであのときの記録つづりを見せて貰いたいんだ。いつだかもすっかり見せて貰ったが、書庫へ行った方が、少しは君たちの邪魔にならなくていいだろうね
断層顔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その隙に尼は、前にのべられた半紙つづりの分厚い帳面を取上げて見ると、白紙は最後たった一葉であとは一枚一枚、鮮かに描いた花片はなびら——と見たのは、紛れなく、口紅で捺した女の唇の形です。
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
日本つづりの帳面を一冊取り出しました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
といって、元帥は、卓子テーブルのうえの電文つづりの上に、大きな手を置いた。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)