継目つぎめ)” の例文
旧字:繼目
羅州盤の継目つぎめの漆にふんを混ぜるという話を想い合わせて、色々と考えさせられる。よい羅州盤は継目が決して壊れないという。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
煉瓦の継目つぎめをこじるもの、叩くもの、蹴飛ばすもの、汗みどろの奮闘で、やっと壁をくずし、鉄扉の錠前を破ることが出来た。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
平岡は其時かほ中心ちうしんに一種の神経を寄せてゐた。かぜいても、すなんでも、強い刺激を受けさうなまゆまゆ継目つぎめを、はゞからず、ぴくつかせてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
新らしい陶器やきものを買っても、それをこわして継目つぎめを合せて、そこに金のとめかすがい百足むかでの足のように並んで光らねば
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
で——眼八の腹の中の口書は、さっき、中年の小僧がしゃべった話とぴったり継目つぎめが合ってきた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牢獄の全体の形は四角であった。私が前に石細工だと考えたものは、今度は鉄かあるいはなにか他の金属の大きな板らしく思われ、その継目つぎめが凹みになっているのであった。
落穴と振子 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
一丈のいわおを、影の先から、水際の継目つぎめまで眺めて、継目から次第に水の上に出る。潤沢じゅんたく気合けあいから、皴皺しゅんしゅの模様を逐一ちくいち吟味ぎんみしてだんだんと登って行く。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
云いながら、諸戸は石膏のある個所を、指先に唾をつけて、擦って見せたが、なる程その下に継目つぎめがある。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
代助はうんと云つて、入口いりぐちに返事をつてゐた門野かどのを追ひはらふ様に、自分でつてつて、椽側へくびした。三千代は椽側と玄関げんくわん継目つぎめの所に、此方こちらいてためらつてた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
継目つぎめの所を息が洩れぬ様に指で圧え、一方の手で、ポンプを押した。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
夜と屋根の継目つぎめが分らないほど、ぶくついて見える。その中へ長蔵さんは這入って行った。なんだか穴の中へでももぐり込んで行ったような心持だった。そうして話している。三人は表に待っている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下駄げたを二三度鳴らして、一間ほど来たとき、女も余と同じ平面に立った。そこで留まると思いのほか、ひらひらと板の上を舞うように進んで余に近づいた。余と女とは板と板の継目つぎめの所で行き合った。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
舞台一面に垂れている幕がふわふわ動いて、継目つぎめの少し切れた間から誰かが見物の方をのぞいた。気のせいかそれがお延の方を見ているようなので、彼女は今向け換えたばかりの眼をまたよそに移した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)