)” の例文
笑う時にはいつもいつも頭を左の肩の上にのせて、手の甲で口を押える様にして、ハッハッハッとれぎれに息を引き込む様に笑った。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そして、ひくい唸り声をれにたてながら、今にもかくれた野性がむんずと起きそうな、カークでさえハッと手をひくような有様だった。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あいちやんはいまこそげるにときだとおもつてにはかにし、つひにはつかれていきれ、いぬころの遠吠とほゞえまつたきこえなくなるまではしつゞけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その上このクライマックスのさわりのところまでしゃべってきた時、プツンと下座の三味線糸がれてしまった。
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)
スイッチがれて動かなくなるのですが、それが丁度六階と五階の間で、網戸を開けても、上へ乗ることも出来ず、下へ潜ることも出来ず、私もエレベーターボーイも
歌のれ目となると、ワツハツハ……といふ笑ひ声が、恰度、合唱のやうに一勢に挙つた。
ゾイラス (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
どうして手をったものかと、今夜も、林崎や悪友のならず者が、里次の家へ寄って、飲みながら話しておると、伊勢詣いせまいりに行くといって、五日ほど前に、家を出た浪人が、台所から、ふいに
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒が嫌ひで茶の好きな太政官は、奈良漬と羊羮とをらしたことが殆んどなかつた。茶は玉露の薄雪といふのを宇治から取り寄せ、煙草は薩摩の國分を、大きな銀煙管に輕く填めて喫んでゐた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
私は、鹹沢しおざわのへりにいて洞窟にいなかったが、そこへ妙な、聴きなれない音がれにひびいてくる。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
話が止れると彼女は、帯の間からハーモニカを取り出して吹奏しながら歩いた。他に彼女の得意なものと云つては何もなかつたが、奇妙なことには彼女はそれが器用であつた。
雪景色 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
と頓狂なめ言葉を掛けてくるお客のいたところとして悲しく忘れられないし、三の輪の寄席の高座では、〽縁でこそあれ末かけて……とあの人が「蘭蝶」を歌い出したらプッツリと糸が
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「軽便鉄道だよ。——岬がれてゐる、一寸と先きに豆粒みたいな島が見えるだらう。源義経は、此方の岬からあの島を眼がけて一足飛びに飛び越えることが出来たんだつて!」
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
また樹立のあいだには小沼があって、キラキラ光る面がれ切れに点綴されているのだ。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
彼は、悦びと悲しみの大渦巻きのなかで、こんなことをれに叫んでいた。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と百合子は、言葉をらずに急速に云ひ続けるのであつた。「アパートを借りて、私達と一緒に生活しないこと? 妾と、兄さんと、三人で……皆なで、働くようになつたら愉快ぢやないこと!」
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)