終局しまい)” の例文
「殿下が女にも子供にも御挨拶のあったには私魂消たまげた。競馬で人の出たには——これにも魂消た。君も競馬を終局しまいまで見物しましたかい」
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何分なにぶんにも呼吸いきが詰まるような心持で、終局しまいには眼がくらんで来たから、にかく一方の硝子ガラス窓をあけて、それから半身はんしんを外に出して、ずほっと一息ついた。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
で、終局しまいに只ほんのて貰えばいように言って、雑誌へ周旋を頼む事はおくびにも出さないで、持って行った短篇を置いて、下宿へ帰って来てから、又下らん奴だと思った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
彼女は終局しまいまでそれを聞くのが恐ろしさに、両手で顔をかくして足早に行き過ぎた。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
もとへ帰るか、倶利伽羅峠くりからとうげ出抜でぬけますれば、無事に何方どちらか国へ帰られます。それでなくって、無理に先へ参りますと、終局しまいには草一条くさひとすじも生えません焼山やけやまになって、餓死うえじにをするそうでございます。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
監督の武士と捕虜との間に日々にちにち衝突が絶えなかった。朝高も終局しまいには疳癪かんしゃくおこして、彼等をことごとく斬れと命じた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それで私もいよいよ忌々いまいましくなって、もう余り小狐へも足踏あしぶみせぬうちに、伯父さんが去る地方の郡長に転じて、家族を引纏めて赴任して了ったので、私もついに雪江さんの事を忘れて了った。これでお終局しまいだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
更に仔細に検査すると、下の方に敷かれた骨は普通の人よりもやや大きい位であるが、上の方へ行くにしたがって骨格が漸々だんだんに縮まって、終局しまいには殆ど小児こどものように小さくなった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
終局しまいには錦絵まで出来て、西郷・桐野・篠原らが雲の中に現れている図などが多かった。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あたしを捨てて逃げるような料見だから、お前さんは一生涯ろくなことは無い。終局しまいには必然きっとむご死様しにようをするよ。」と、お杉は鬼のような顔をして、常に夫を呪った。重蔵はいよいよお杉に飽いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)