糸屑いとくづ)” の例文
旧字:絲屑
紡績糸屑いとくづの俵の間から寝ぼけた眼をこすりながら二人は抜け出でて物蔭を伝ひながら工場の方へ戻つて行つた。と間もなく終業のブウは鳴つた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「あなた。」とおつかさんがきつとしたこゑでおつしやつて、おひざうへ糸屑いとくづほそい、しろい、ゆびのさきでふたツはじきおとして、すつとまどところへおちなすつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
針箱はりばこ糸屑いとくづうへやうまたいでちやふすまけると、すぐ座敷ざしきである。みなみ玄關げんくわんふさがれてゐるので、あたりの障子しやうじが、日向ひなたからきふ這入はいつてひとみには、うそさむうつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
糸屑いとくづにまじる柳の一葉ひとはかな
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)