ばな)” の例文
考えても——あがばなには萌黄と赤と上草履をずらりと揃えて、廊下の奥の大広間には洋琴ピアノを備えつけた館と思え——彼奴きゃつが風体。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寝入りばなと見えて、門をたたけど呼べど叫べど醒めてくれぬ。つい近所にめいの家があるが、臨月近い彼女を驚かすのも面白くない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
上りばなの六畳へ来てみると、ふだんから小さなおさよ婆さんがいっそう小さくしぼんで、眼をしょぼつかせながらすわっている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
中へ這入ると、推測に違わず正面の螺旋階らせんかいの上りばなに、———大方光子が私の為めに置いて行ったものであろう。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして底のへり小孔こあながあって、それに細い組紐くみひもを通してある白い小玉盃しょうぎょくはいを取出して自ら楽しげに一盃いっぱいあおいだ。そこは江戸川の西の土堤どてあがばなのところであった。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今、二人ともに、これから寝に就こうとして、その寝つきばなをまだ話が持てているらしいのです。会話といううちに、おしゃべりの斎藤が一人で持ちきっているようなもので
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
島民の家故、別に遠慮することもないので、勝手にあがばなに腰掛けて休むことにした。
夾竹桃の家の女 (新字旧仮名) / 中島敦(著)
寝いりばなの小耳に
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
前後も不覚にいびきを掻き始めたその寝入りばなを、逆さにしごくようにあわただしく叩き起されたのであった。
「これは、これは、おうようこそや。……今の、あがばなを覗いたら、見事な駒下駄かっこがあったでの。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
島民の家故、別に遠慮することもないので、勝手にあがばなに腰掛けて休むことにした。
女でないのみならず、男のうちでも筋骨のたくましい、風采ふうさいのいかめしい、面構つらがまえのきかない、そのくせ、はいりばなに兵馬とかおを見合せて、ニヤリと笑った気味の悪い武芸者風の壮漢でありました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
島民の家故、別に遠慮することもないので、勝手にあがばなに腰掛けて休むことにした。