突切つッき)” の例文
垣を越える、町を突切つッきる、川を走る、やがて、山の腹へだきついて、のそのそと這上はいあがるのを、追縋おいすがりさまに、尻を下から白刃しらはで縫上げる。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其の位な心得はあるだろう、仮令たとえ火の中でも水の中でも突切つッきってきなさい、其の代りこれを突切ればあとは誠に楽になるから、さっ/\と行きなさい
小さい方は八ツばかり、上は十三—四と見えたが、すぐに久能谷くのやの出口を突切つッきり、紅白の牡丹ぼたんの花、はっとおもかげに立つばかり、ひらりと前をき過ぎる。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ずっと精神をこらして、仮令たとえ向うに鉄門があろうとも、それを突切つッきって通り越す心がなければなりませんぞ
縦通りを真直まっすぐに、中六なかろく突切つッきって、左へ——女子学院の塀に添って、あれから、帰宅のみちを、再び中六へ向って、順に引返ひっかえすと、また向うから、容子といい
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
望事のぞみごとは近く遂げられるが、其処そこの所がちと危ない事で、これと云う場合に向いたなら、水の中でも火の中でも向うへ突切つッきる勢いがなければ、必ず大望たいもうは遂げられぬが
かしこまりましたが、先達せんだって職人の兼という奴が、のみで足の拇指おやゆび突切つッきった傷が破傷風はしょうふうにでもなりそうで、ひどく痛むと云いますから、相州の湯河原へ湯治にやろうと思いますが
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
真直まっすぐに小石の裏庭を突切つッきると、葉のまばらな、花の大きなのが薄化粧して咲きました
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きょろきょろ四辺あたりみまわしたが、まさか消え失せたのじゃあるまい、と直ぐに突切つッきってぐるりと廻ると、裏木戸に早や山茶花さざんかが咲いていて、そこを境に巣鴨の卯之吉が庭になりまさ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飜然ひらりと飛ぶ。……乱るるくれない、炎のごとく、トンと床を下りるや、さっと廻廊を突切つッきる。途端に、五個の燈籠ひとしく消ゆ。廻廊暗し。美女、その暗中に消ゆ一舞台の上段のみ、ややあかるく残る。)
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それからは家続きで、ちょうどお町の、あのうち背後うしろに当る、が、その間に寺院てらのその墓地がある。突切つッきれば近いが、けて来れば雷神坂の上まで、土塀を一廻りして、藪畳やぶだたみの前を抜ける事になる。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)