礼讃らいさん)” の例文
旧字:禮讃
張飛を礼讃らいさんしていたが、そのうちに、何か気に喰わないことがあったのか、張飛は、咎もないひとりの士卒を、さんざんに打擲ちょうちゃくしたあげく
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
マタ・アリという名は、彼女の美貌を礼讃らいさんして、修験者しゅげんじゃたちがつけたもので、Mata Hari というのは、「朝の眼」という意味である。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
また彼は、自分の手で、心ゆくまで白鳥会を礼讃らいさんした詩を書き上げたいという野心をさえ、人知れず抱いているのである。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
世間は、反動的に静かになり、東京市民は、めっきり暖くなったる朝る朝を、長々しい欠伸あくびまじりで礼讃らいさんしあった。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それに頓着あってか、無くてか、金助は、立てつづけに、女軽業の親方のお角なるものの、気前の礼讃らいさんにとりかかる。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お世辞の失敗を取りかえそうとして、山名先生のモオツアルト礼讃らいさんの或る小論文を思い出し、おそるおそるひとりごとみたいにつぶやいて先生におもねる。
渡り鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
これも初霜の洗礼を受けて、その濃い色を秋の日にかがやかしながら、見あぐるばかりに枝や葉を高く大きくひろげた姿は、まさに目ざましいと礼讃らいさんするほかは無い。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は、何も過去の時代のみを礼讃らいさんして、現代をのろうというような、気の強いものではありません。
話になって後世へ伝わる至芸だと思ったのですが、その上あなたがもし当代の礼讃らいさんに一手でも舞を見せてくださいましたら歴史上に残ってこの御代みよの誇りになったでしょうが
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
私はブラームスの礼讃らいさんの文章と講演を、本年に入ってから、十回以上繰り返している。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
左の方に目を転ずると、早崎はやさきの瀬戸から天草灘へかけ、大小幾多の島々の影が海天一色かいてんいっしきの間に、次第に融け込んで行く。日ぐらしのコーラスが谷にこだまして一斉にその日の最後の礼讃らいさんを捧げる。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
彼は牝豹めひょうの前のうさぎのごとく、葉子を礼讃らいさんし、屈従していた。処女のような含羞はにかみがあるかと思うと、不良少年のような聡慧そうけいさをもっていたが、結局人間的には哀れむべき不具者としか思えなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
礼讃らいさんせられているばかりでなく、沖縄本島の村々ではつい近頃まで、八月の祭の月に出現して、長者の大主と対談することが、定例の村狂言であったそうだが、是はわざおぎであり芸能であるから
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
太陽を礼讃らいさんしてぞ日向ひなたぼこ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
五月礼讃らいさん
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「摂理」は、次郎をして真に「摂理」を礼讃らいさんせしめるために、なおいろいろと彼のために準備してやらなければならないことがあったのである。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「ちぇッ、くそおもしろくもねえ。また宋司令の天子さま礼讃らいさんが始まったよ。いったい、みことのりだの、お招きだのと、何を待とうッていう寝言なのか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は死ぬる前夜まで、大いに景気のいい顔をしてはしゃいでいるつもりです。そうして、あくまでも小説だけを書いて行きます。しかし、まさか、戦争礼讃らいさんの小説などは書く気はしません。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ただ村々のつじには高倉があって稲を蔵し、また一部には八月節の日にシチヤガマ(節小屋)が設けられて、そこの祭には新稲にいにがなしを迎え、東西の稲霊いにやたま礼讃らいさんする言葉があったことを知るのみだが
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
どこまで行っても、八五郎の女人礼讃らいさんは果てしもありません。
私はこの意味で雲仙のゴルフ・リンクスを礼讃らいさんする。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
と、その日の群集が、ただ、もう礼讃らいさんしたというのも、あながち誇張な嘆声ではなかったであろう。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただし東海岸の邑里ゆうりの繁栄につれて、いわゆるアガルイの大主おおぬし、テダが穴の大主の礼讃らいさんが盛んになり、ことに毎朝の観望をもって、太陽の海から昇ってくる地点の推移、それと季節の関係に心づいて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
わけは分らずに礼讃らいさんした。といってそれはお世辞ではない。やはり満足感であった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足利若御料わかごりょう礼讃らいさんはまア笑止しょうしながら聞き捨ててもおこうが、鎌倉入りの大合戦は、ひとえに、若御料(千寿王)の参陣があったからこそ勝ったのだとかした雑言ぞうごんだけはききずてならん。
けれどそれは、醜い生活のからから真実の生活へ出ようとする真剣な願望に、仏陀を力とし、のり礼讃らいさんを明りとしてきたので、二人の胸には、恋しつつ、恋とは自覚していないかもしれぬ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)