すり)” の例文
その光で、すりガラスの花瓶のなかに仕込んだスタンド付きの小さなマイクが、シルエットになってクッキリと浮きあがった。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
すり硝子めく明るい霧の底に、四方の風景が白つぽく淀んでゐる。昨夕から引續いて、風は少しも無い。四邊の白さの底に何か暖いほんのりしたものさへ感じられる。
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
小舷こべりを打つ水の音が俄に耳立ち、船もまた動揺し出したので、船窓から外を見たが、窓際の席には人がいるのみならず、その硝子板ガラスいたは汚れきってすり硝子のように曇っている。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
紀久子の寝室の鉄格子の嵌まっているすりガラスの窓に、猛火に責め立てられてもがき苦しんでいるらしく、両手を広げて窓に飛びかかっている正勝の姿が影絵のように映って、踊り狂っていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そこで水を飲むためにわたしはひざまずき、魚どもの静かな客間をのぞく。それはすりガラスの窓を透してさすようなやわらげられた光りにみたされ、夏と同様なかがやく砂のゆかをもっている。
筆結ふでゆい弦売つるうり轆轤師ろくろし・饅頭売・賽磨さいとぎよろい細工・草履作・足駄作・唐紙師・箔打・鏡とぎ・玉すり硯士すずりし・鞍細工・葛籠作つづらつくり箙細工えびらつくり・枕売・仏師・経師・塗師の助手・硫黄・箒売・一服一銭・煎じ物売など
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
つら/\たるに数万の石人のすりなしたる玉のごとし。
すり硝子とニッケルを組み合わせた、モダーン・タイプの硝子扉ケースメントになり、なにやらの工匠たくみが彫った有名な欄間と、銀の引手のついた花鳥の絵襖えぶすまが取り払われ
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
真直まっすぐ往来おうらいの両側には、意気な格子戸こうしど板塀いたべいつづき、すりがらすの軒燈けんとうさてはまた霜よけした松の枝越し、二階の欄干てすり黄八丈きはちじょう手拭地てぬぐいじ浴衣ゆかたをかさねた褞袍どてらを干した家もある。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
つら/\たるに数万の石人のすりなしたる玉のごとし。
すり硝子のおもてのように光っていたが、間もなく、そのあたりも漠々とした雲の領域になってしまい、いけなければあと帰りすればいいと、多寡たかをくくっていた阿曽の希望を
白雪姫 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「清閑院の杉戸をとっぱらって、バアのようなすりガラスの戸をはめこんだのも?」
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)