磁石じしやく)” の例文
朧月おぼろづきに透して見るまでもなく、磁石じしやくと鐵片のやうに、兩方から駈け寄つた二人が、往來の人足のまばらなのを幸ひ、ひしと抱き合つた時
みちびかるゝまゝに入込いりこんだのは、階上にかい南端なんたん一室ひとまで、十じやうぐらいの部室へや中央ちうわうゆかには圓形えんけいのテーブルがへられ、卓上たくじやうには、地球儀ちきゆうぎ磁石じしやくるゐ配置はいちされ
それで一さい草木さうもくつち直角ちよくかくたもつてる、冬季とうきあひだつち平行へいかうすることをこのんでひとてつはり磁石じしやくはれるごとつち直立ちよくりつして各自てんで農具のうぐる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
地球ちきゆう一箇いつこおほきな磁石じしやくであることなどをまなばれたであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
磁石じしやくにか吸はれよる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
美しい客と見ると、馴れて居る筈の店中も、何となくザワついて、二三人の番頭手代が、磁石じしやくに吸付けられる鐵片のやうに、左右から寄つて參ります。
「若い男と若い女は、近いのを引つ張り合ふよ、磁石じしやく見たいなものさ。喜三郎は良い男で、ツイ裏に住んでゐる、大澤傳右衞門の娘のお頼は滅法良い娘だ」
洗ひざらしの縞目しまめも判らない袷一枚、月代さかやきは伸びるに任せて、手も足も無殘にあかまみれたのが、磁石じしやくに引かれる鐵片のやうに、無氣味な二つの瞳ばかりは、空地の隅に轉がされた
まばらになつて居る客は、元より八五郎の飛んでもない冒險の意味などを知る筈もなく、木戸番のお倉は、委細構はず、素晴しい次高音アルトを響かせて、兩國中の客を、鐵片を吸ふ磁石じしやくのやうに
「あれぢや磁石じしやくの針が逃げる」