碧瑠璃へきるり)” の例文
碧瑠璃へきるりの大空にひとみほどな黒き点をはたと打たれたような心持ちである。消えてせるか、溶けて流れるか、武庫山むこやまおろしにならぬとも限らぬ。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
碧瑠璃へきるりで刻んだようなのもいる。紫水晶でこしらえたようなのもある。それらの小さな魚を注意して仔細しさいに観察していると魚がとりどりに大きく見えて来る。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
風は一週間もつづいたが、それがやむと天地にわかになごやかになり、春の光はききとしてかがやき、碧瑠璃へきるりの空はすみわたって、万物新たに歓喜の光に微笑びしょうした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
九月くぐわつ二十日はつか前後ぜんごに、からりとさわやかにほのあたゝかに晴上はれあがつたあさおな方角はうがくからおな方角はうがくへ、紅舷こうげん銀翼ぎんよくちひさなふねあやつりつゝ、碧瑠璃へきるりそらをきら/\きら/\と幾千萬艘いくせんまんそう
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二人は気がついてすぐ頭の上を仰ぐと、昼間は真っ白に立ちのぼる噴煙が月の光を受けて灰色に染まって碧瑠璃へきるりの大空をいているさまが、いかにもすさまじくまた美しかった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
霜ははれに伴う。霜の十一月は、日本晴にっぽんばれの明るい明るい月である。富士は真白。武蔵野の空は高く、たゝけばカン/\しそうな、碧瑠璃へきるりになる。朝日夕日が美しい。月や星がえる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
此時このときまつたけて碧瑠璃へきるりのやうなひがしそらからは、爛々らん/\たる旭日あさひのぼつてた。
又その淵には、時々四畳半位な大きな碧瑠璃へきるりうづが幾つも幾つも渦巻いたのを、彼はよく夢心地で眺め入つた。さうしてそれを夢そのもののなかでも時折見た。この頃は八つか九つででもあつたらう。
夏なり、碧瑠璃へきるりの海は
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
御堂そのまま、私は碧瑠璃へきるり牡丹花ぼたんかうちに入って、また牡丹花の裡から出たようであった。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はるかに(高濶こうかつなる碧瑠璃へきるりの天井を、髪つややかに打仰ぐ)姿を映します。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)