眼鼻めはな)” の例文
少年はせたすばしっこそうなからだつきだし、色こそしおやけで黒いが、おもながの顔は眼鼻めはなだちが際立きわだっていて、美少年といってもいいだろう。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一分や二分じゃア借りたってわっちの身の行立ゆきたつ訳は有りませんねえ、借金だらけだから些と眼鼻めはなを付けて私も何うか堅気かたきに成りてえと思ってお願い申すのだが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
高等学校へはいったのちは、語学も少し眼鼻めはながついたから、時々仏蘭西フランスの小説も読んでみた。ただしその道の人が読むように、系統的に読んだのでもなんでもない。
仏蘭西文学と僕 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その赤ん坊はまだ人間の体裁を具えた眼鼻めはなっているとはいえないほど変な顔をしていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なまぐさい血汐に眼鼻めはなたれて、思わず押えた手をゆるめると、敵の亡骸むくろはがっくりと倒れた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それと同じく人の容貌ようぼうを評するにも、よく十人なみという言葉を使う。これはすなわち美醜びしゅうの一人前という意味であるが、美醜の割り出しなどは、眼鼻めはな顔形かおかたちの寸法をはかって出来得るものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
刹那せつな、かのおごりたる眼鼻めはなども
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
送りけるが娘お幸は今年ことし十七歳となり尋常なみ/\の者さへ山茶も出端でばなの年頃なるにまして生質うまれつき色白いろしろにして眼鼻めはなだちよく愛敬あいきやうある女子をなごなれば兩親りやうしんは手のうちたまの如くにいつくしみ手跡しゆせき縫針ぬひばりは勿論淨瑠璃三味線も心安き方へ頼みならはせ樂みくらして居ける處に一日あるひ長八は淺草觀音へ參詣なし夫より上野の大師へ參らんと車坂くるまざか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)