真面目しんめんぼく)” の例文
旧字:眞面目
俗に言う触らぬ神にたたりなしの趣意に従い、一通りの会釈挨拶を奇麗にして、思う所の真面目しんめんぼくをば胸の中におさめ置くより外にせんすべもなし。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また女の作家がこういう態度で物を書けば、几帳きちょうを撤して女の真面目しんめんぼくを出すのですから、女の美も醜もく男の方に解る事になりましょう。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
天然を講究する人一草一木のを知り、人事を観察する人一些事一微物の真面目しんめんぼくり、人間心中間一髪かんいっぱつの動機を観る者は絶無にして僅有きんゆうなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
平野革谿ひらのかくけいの『一夕医話』等と趣をことにした、真面目しんめんぼくな漢蘭医法比較研究の端緒がここに開かれたかも知れない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それらの点から考えても尊者は宗派的あるいは国際的関係を離れて全く仏教の真面目しんめんぼくの意味を世界に布教したいという考えを持って居られた尊いお方であります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その他に私は、パパ・ハイドンの真面目しんめんぼくを発揮するものとして「玩具トイシンフォニー」を挙げておきたい。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
戦争本来の真面目しんめんぼくは決戦戦争であるべきですが、持久戦争となる事情については、単一でありません。
最終戦争論 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
のこされた教育課程の中には、やや専門的な課目の名前もまじっているが、淡窓先生の真面目しんめんぼくは漢詩人であって、その教育の大本は、敬天を主眼とした人間教育であった。
淡窓先生の教育 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
鈍重で、田舎いなか臭くさえ見える大将だった。いや、そう見せているところに、彼の真面目しんめんぼくはあった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしも此処ここに真に国家と個人との関係に就いて真面目しんめんぼくに疑惑をいだいた人があるとするならば、その人の疑惑乃至ないし反抗は、同じ疑惑を懐いた何れの国の人よりも深く、強く
性急な思想 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
そうすれば今日ほど世人が科学の真面目しんめんぼくを誤解するようなおそれが少なくなり、また一方では科学的の研究心をもった人物を養成するに効果がありはしないかと考えるのである。
方則について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
自分はただ自分が彼の真面目しんめんぼくと感ずるところを書き現わすのみである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
怪侠盗の真面目しんめんぼく
俗に言う子供の馬鹿ほど可愛く片輪ほど憐れなりとは、親の心の真面目しんめんぼくを写したるものにして、其心は即ち子供の平等一様に幸福ならんことを念ずるの心なり。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
戦争本来の真面目しんめんぼくは武力をもって敵を徹底的に圧倒してその意志を屈伏せしむる決戦戦争にある。
戦争史大観 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
バッハの真面目しんめんぼくを伝うる熱情に燃えて、二百年前の機構のオルガンを捜し出し
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「よしっ、その分ならば、わが真面目しんめんぼくを見せてくれよう」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左れば今日人事繁多はんたの世の中に一家を保たんとするには、仮令い直に家業経営のしょうに当らざるも、其営業渡世法の大体を心得て家計の方針を明にし其真面目しんめんぼくを知るは
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
天才モーツァルトの真面目しんめんぼくはここにあると言いたいようである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
実際の真面目しんめんぼくを言えば、常にく夜を守らずして内を外にし、ややもすれば人を叱倒しかりたおし人を虐待するが如き悪風は男子の方にこそ多けれども、其処そこ大目おおめに看過して独り女子の不徳を咎むるは
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
殻威張の群に入るべからず従前これまでかつて人に語らず、また語る必要もないからだまって居て、内の妻子も本当に知りますまいが、私の本心において何としても仕官が出来られないその真面目しんめんぼくを丸出しに申せば
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)