真裸まっぱだか)” の例文
旧字:眞裸
よし真裸まっぱだかになるほど、職業から放れて無一もんになっていてもいい、葉子の乗って帰って来た船に木村も乗って一緒に帰って来たら
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
糸車をじい……じい……村も浮世も寒さに喘息ぜんそくを病んだように響かせながら、猟夫に真裸まっぱだかになれ、と歯茎をめておごそかに言った。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
川の両岸には川越しの小屋が立っていて、真裸まっぱだかになった川越し人足が六七人ほど、散らばっているのが一目に見えました。
表裏の区別を全然無視せんとて、会社なり役所なりに出勤するに綿袍どてらを着て行き、夏の日に真裸まっぱだかで行くものはあるまい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さっきから大学生の上原をみる眼が少し変ってるなと思っていたら、大学生はやにわに、上半身、真裸まっぱだかになって、上原に角力すもうをいどみかけるのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
むこうに見える高い宿屋の物干ものほし真裸まっぱだかの男が二人出て、日盛ひざかりを事ともせず、欄干らんかんの上をあぶなく渡ったり、または細長い横木の上にわざと仰向あおむけに寝たりして
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
土方が真昼中甲州街道をまだ禁菓きんかわぬアダム同様無褌むふんどし真裸まっぱだかで横行濶歩、夜はの様な家へでも入込むので、未だ曾て戸じまりをしたことがない片眼かためばあさんのあばら家まで
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
無茶先生はやはり真裸まっぱだかのまんま、ガブガブお酒を飲みながら大威張りで答えました。
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
みのり あたし、去年の冬、蓑虫みのむし真裸まっぱだかにして、冷い雪の上に捨てちゃったの。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
みんな腰から上は真裸まっぱだかで、腰にいろんな色の薄絹うすぎぬをつけてるのです。
魔法探し (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
クララはやはりこの堂母ドーモのこの座席に坐っていた。着物を重ねても寒い秋寒に講壇には真裸まっぱだかなレオというフランシスの伴侶なかまが立っていた。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
するとむこうに見える柳の下で、真裸まっぱだかな男が三人代る代るおおき沢庵石たくあんいしの持ち上げくらをしていた。やっと云うのは両手へ力を入れて差し上げる時の声なんだよ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「大きな声を出すと斬ってしまうぞ。只おれが尋ねることだけ返事しろ。貴様の処には髪毛や髭を蓬々と生やした真裸まっぱだかの怖い顔の男と、背の高い女と低い男の三人が昨夜から泊まっているだろう」
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
めし屋の亭主は、行燈あんどうとも、蝋燭ろうそくとも言はず、真裸まっぱだかあわまどつて
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
眼をさますと、真裸まっぱだかで寝て居る。外では最早ひぐらしが鳴いて居る。蚊帳外かやそとの暗い隅では、蚊が呍々うんうんうなって居る。ね起きて時計を見れば、五時に十分前。戸をくると、櫟林くぬぎばやしから朝日の金光線がして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)