ぱい)” の例文
「どうだ、一ぱい遣らないか」と、前にあった葡萄酒ぶどうしゅびんを持って振って見せた。中にはまだ余程這入っていた。梅子は手をたたいて洋盞コップを取り寄せた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
讓り申べしときゝて左京は大によろこさらば早々らちあけんと立上るを大膳はしばしと押止おしとゞめ先々待たれよ今宵の仕事はふくろの物を取り出すよりもやす先々まづ/\ぱいのんだ上の事とて是より酒宴しゆえん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ところが、東片町には何かの機会に一ぱいやりたい人たちがそろっていて、十一宿の願書が首尾よく納まったと聞くからには、とりあえず祝おう、そんなことを先方から切り出した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
の小紋の羽織が着たいとか、帯は献上博多を締めたいとか、雪駄せった穿いて見たいとか云い出して、一日あるひ同宿の笹屋さゝやという料理屋へあがり込み、一ぱいやっている側に酌取女しゃくとりおんなに出た別嬪べっぴん
それがまた大いに悦んで聞かれた。ところで八月二十八日の日に八里ばかりの波動状の山脈をえて行くのに一滴も水がない。立際たちしなにお茶を一ぱい飲んだきりで麦焦しも喰うことが出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
はなはだご苦労である。うらなり君がおれの前へ来て、一つ頂戴致しましょうと袴のひだを正して申し込まれたから、おれも窮屈にズボンのままかしこまって、一ぱい差し上げた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
言ず此町内にて評判の根生惡こんじやうわるの家主勘兵衞め退役たいやくでもせよかしとつぶやきながら家に入今宵こよひは幸ひ旦那をのせて六百文ヅツに有付たりと一ぱいさけたのしみに快よく打臥うちふしけるが早夜も明し故助十は權三を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「勝重さん、一ぱい行こう。」香蔵がそれを言い出した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
茂「今日は松五郎を呼んで一ぱい飲みたい」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)