病上やみあが)” の例文
何しろ露西亜の冬の厳しい寒さの中を降りしきる雪に打たれたのだから、病上やみあがりの身の何とて堪えらるべき、忽ち迷眩して雪の上に卒倒した。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
まるで病上やみあがりの権八のような恰好で木枯こがらしといっしょにひょろりと舞いこんで来た。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「馬鹿、不親切きはまる、何を着れば好いんだ。如何いかに田舎者だつて、それ位の注意が出来んでうなる。」と散々毒づいて見たが、妹は病上やみあがりの蒼い顔して黙つて俯向うつむいてばかり居るので
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
そんな脂切ったのがあるかと思うと、病上やみあがりのあおっしょびれが、頬辺ほっぺたくぼまして、インバネスの下から信玄袋をぶら下げて、ごほごほせきをしながら、日南ひなた摺足すりあし歩行あるいて行く。弟子廻りさ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其處そこ病上やみあがりと風采とりなり中形ちうがた浴衣ゆかたきよらかな白地しろぢも、よる草葉くさばくもる……なよ/\とした博多はかた伊達卷だてまき姿すがたで、つひぞないことにはた。とき美人びじん雪洞ぼんぼりつてたのである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
婦人おんなも、産後か、病上やみあがりてった、あの、すご蒼白あおじろさは、どうです。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)