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由斷
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ゆだん
正太は
筆やの
店へ
腰をかけて、
待つ
間のつれ/″\に
忍ぶ
戀路を
小聲にうたへば、あれ
由斷がならぬと
内儀さまに
笑はれて、
何がなしに
耳の
根あかく
あゝあの
聲は
旦那樣、三
味線は
小梅さうな、いつの
間に
彼のやうな
意氣な
洒落ものに
成り
給ひし、
由斷のならぬと
思ふと
共に、
心細き
事堪えがたう
成りて、
締つけられるやうな
苦るしさは
八
月廿日は
千束神社のまつりとて、
山車屋臺に
町々の
見得をはりて
土手をのぼりて
廓内までも
入込まんづ
勢ひ、
若者が
氣組み
思ひやるべし、
聞かぢりに
子供とて
由斷のなりがたき
此あたりのなれば