“瓦(がわら)” の例文
西の屋根瓦(がわら)の並びの上に、ひと幅日没後の青みを置き残しただけで、満天は、紗(しゃ)のやうな黒味の奥に浅い紺碧(こんぺき)のいろを湛(たた)へ、夏の星が
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
その晩一晩荒れに荒れて翌日になってやっと納まりましたが、市中の損害はなかなかで近年稀(まれ)な大あらしでありました。何処(どこ)の屋根瓦(がわら)も吹き飛ばされる。
可児才蔵はバラバラと望楼(ぼうろう)をおりていったようす、いっぽうの竹童も、やっと屋根瓦(がわら)の上へはいのぼってみると、うれしや、畜生(ちくしょう)ながら霊鷲(れいしゅう)クロにも心あるか
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竹下氏は朝鮮瓦(がわら)の蒐集家として聞えているが、その蒐蔵の中には多くの見事な磚(せん)や瓦の外に、菓子型、筆筒(ひっとう)、真鍮(しんちゅう)の香炉(こうろ)など優品が多い。いずれも忘れ難いものであった。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
風が強くて、雨が横から吹いて、傘(かさ)がさせなかった。屋根瓦(がわら)が吹き飛ぶので、街(まち)に出られなかった。海岸部分は軒先まで浸水した。水がひくと同時に、壊崩(くず)れた家が無数だった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
目のまえの鉄筋コンクリートだての大工場(だいこうば)の屋根瓦(がわら)がうねうねと大蛇(だいじゃ)が歩くように波をうつと見るまに、その瓦の大部分が、どしんとずりおちる、あわてて外へとび出すはずみに
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
居士は一紙の墨符(ぼくふ)を書いて、空(くう)にむかってなげうつと、妻はひと声高く叫んで、屋根瓦(がわら)の上に飛びあがった。居士はつづいて一紙の丹符(たんぷ)をかいて投げつけると、妻は屋根から転げ落ちて死んだ。
あんな高台へ、あんな高い建築を許して勿体(もったい)なくも皇居のお屋根まで見えると、憤慨するものもあったほど巍然(ぎぜん)とした、石の壁と、銅瓦(がわら)の、塔の屋根は尖(とが)っているが円く、妙致を極めたものだった。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
古びた青銅瓦(がわら)の山門を仰いで
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)