理髪店りはつてん)” の例文
旧字:理髮店
ある田舎いなかに、おじいさんの理髪店りはつてんがありました。おじいさんは、もうだいぶとしをとっていまして、がっていました。
てかてか頭の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
白は客の顔をうつしている理髪店りはつてんの鏡を恐れました。雨上あまあがりの空を映している往来おうらいの水たまりを恐れました。往来の若葉を映している飾窓かざりまど硝子ガラスを恐れました。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
どこからかそら豆をゆでる青いにおいがした。古風な紅白の棒の看板を立てた理髪店りはつてんがある。妖艶ようえんやなぎが地上にとどくまで枝垂しだれている。それから五六けん置いてさびちた洋館作りの写真館が在る。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
中風でている父親に代って柳吉が切り廻している商売というのが、理髪店りはつてん向きの石鹸せっけん、クリーム、チック、ポマード、美顔水、ふけとりなどの卸問屋おろしどんやであると聞いて、散髪屋へ顔をりに行っても
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
すると、いつかゆめたことのある理髪店りはつてん主人しゅじんよりは、もっと、おそろしいかおつきをして、くろ洋服ようふくた、たかおとこが、ふいに少女しょうじょをむちでなぐりました。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、そのはなあてにあるいていますと、そのしたに、ちいさな理髪店りはつてんがありました。主人しゅじんというのは、かおつきの四かくひとでして、がみがみと小僧こぞうをしかっていました。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
若者わかもの満足まんぞくして、この理髪店りはつてんからそとてゆきました。
てかてか頭の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)