珠簾しゅれん)” の例文
見れば、金華の車蓋しゃがいに、珠簾しゅれんの揺れ鳴る一車がきしみ通って行く。四方翠紗すいしゃ籠屏ろうびょうの裡に、透いて見える絵の如き人は貂蝉ちょうせんであった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
董卓は早くも車駕を命じ、珠簾しゅれん宝台ほうだいに貂蝉を抱き乗せ、扈従こじゅうの兵馬一万に前後を守らせ、郿塢びうの仙境をさして、揺々ようようと発してしまった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
景陽宮の深殿しんでんは、ここかがや祗候しこうだった。出御しゅつぎょ金鈴きんれいがつたわると、ほどなく声蹕せいひつむちを告げること三たび、珠簾しゅれんサラサラと捲き上がって
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わけても、信長の座所は、金銀珠簾しゅれんの結構をつくし、彼が一夜の休息のために、すべて新たに普請ふしんしたものと思われる。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主客の列は、左右に椅子いすを並べて分れた。捲きかかげた珠簾しゅれんの下から、後亭の池園ちえんを見れば、蓮葉はちすばのゆらぎ、芙蓉ふようの色香、ここも山寨の内かと怪しまれるほどである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一戦一進、蜀陣はかばねの山を越え、血の流れを渡って進んだ。帝座のあたりを守る白旄はくぼう黄鉞こうえつ、また黄羅こうら傘蓋さんがいまで、ことごとく凍って、水晶の珠簾しゅれんが揺ぎ進むようだった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仮殿とはいいながら、それは清々すがすがしい白木に金銀の菊花がちりばめられ、珠簾しゅれんには紫のひもが神々しく垂れて、大屋根のいらかもさながら金砂をいた大和絵そのままにかすんで見える。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
楼台は蜘蛛の巣にすすけ、珠簾しゅれんは破れ、らんは朽ち、帝の御衣ぎょいさえ寒げではないか。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甘夫人も、夫人も、珠簾しゅれんのうちに伏しまろんで、声を放って泣き悲しんだ。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袁術えんじゅつの息子へ嫁がせるまでになって、一夜、盛大な歓宴をひらき、珠簾しゅれん輿こしにのせて、淮南わいなんの道へと見送ったが、にわかに、模様が変ったため、兵を派して輿を途中から連れもどし、そのまま
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
珠簾しゅれん輿こし錦蓋きんがいの美車。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)