えて)” の例文
与次郎の飼つてゐるえてきちが、お初徳兵衛の祝言をするやうなめでたい事はあまり知らなかつたので、みんな手を拍つて感心した。
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
おつや ァちゃん、お前どうしたの。木から落っこちたえてさんのように、今夜はいやにぼんやりだね。もう眠くなったのかい。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
えてを肩に乗せた派手やかな若衆ですね、そういう扮装よそおいの若衆ならばさっき通りましたよ、という者がある。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冗、冗、冗談も休みやすみおっしゃいませよ。えての手にしたっても、てめえの背中へドスを
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
そうかと思いますとまた、墨のにじんだあとが、さもさもけだものの毛で、えてそっくり。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうれユウちゃん、こんどはえてさん。」
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
智慧自慢のてあひに限つて自分から生捕られる——これは何もえてきちに限つた事ではない。犬養木堂などはよく心得てゐて欲しい。
「もしもし、えてのお泊り賃は、無料ただにいたしておきますが、私どもへお越しくださいませぬか」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「めんどうだ。えてのまねをしてやろうぜ。船頭、舟をあの横の石がきへつけなよ」
雨や陽気がよくないからとて、どうするものだ。得ての、空の美しい虹の立つ時は、地にも綺麗な花が咲くよ。芍薬しゃくやくか、牡丹ぼたんか、菊か、えてが折ってみのにさす、お花畑のそれでなし不思議な花よ。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
猟師の姿が見えなくなると、猿公えてこうは俳諧師の鳴雪翁のやうな(忘れてゐたが、鳴雪翁もえてきちと同じやうに四国生れである)
ホシはえての五おう、強情で素ばしッこく、悪くゆけばドン底まで落ちてこうし、好くゆけば位人臣をきわめるほどでないまでも、ウンと幸運にのして栄える生れ性だそうだが——ただ
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ろくでもねええてしばいなんぞにいって、のうのうとやにさがっているから、こういうことになるんですよ! どこへうせやがったか、またむだな詮議せんぎしなくちゃならねえじゃござんせんか!
雨や陽気がよくないからとて、うするものだ。ての、空に美しい虹の立つ時は、地にも綺麗きれいな花が咲くよ。芍薬しゃくやくか、牡丹ぼたんか、菊か、えてが折つてみのにさす、お花畑のそれでなし不思議な花よ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この一事は四国出身の人達が、何をおいても忘れてはならない郷土くに自慢の材料で、人間に自慢の種が見つからない場合には、えてきちやのみを自慢の数によみ込んだところで、少しの差支さしつかへもないのだ。
……それこそまた、えてどもが寄合場よりあいばになったでございます。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かしたな、えてつかい
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにッ。えてとな!」