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物狂
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ものくる
妻の
皓體が
氣懸りさに、
大盡ましぐらに
奧の
室へ
駈込むと、
漸と
颯と
赤く
成つて、
扱帶を
捲いて
居る
處。
物狂はしく
取つて
返せば、
畫師も
其の
畫も
何處へやら。
そして、ただひとり、
日が
暮れても、
松の
木だけは、
物狂おしそうに、
海に
向かって、ほえていました。
旗を伏せ、
馬蹄をしのばせ、二宮村、池内村をすぎ、
物狂い
坂で、朝となった。
「むゝ、雨は
歇んだ、けれどもお
媼さんの姿は
未だ
矢張人間だよ。」と
物狂はしく
固唾を飲んだ。
もう
永久に、あの
姿が
見られないと
思うと、ちょうは、また
物狂おしく、
昨日のように、
空高く
舞い
上がったのです。
美しい
花弁のように
傷ついたちょうの
姿は、
夕日に
輝きました。