物狂ものくる)” の例文
つま皓體かうたい氣懸きがかりさに、大盡だいじんましぐらにおく駈込かけこむと、やつさつあかつて、扱帶しごきいてところ物狂ものくるはしくつてかへせば、畫師ゑし何處どこへやら。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、ただひとり、れても、まつだけは、物狂ものくるおしそうに、うみかって、ほえていました。
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
旗を伏せ、馬蹄ばていをしのばせ、二宮村、池内村をすぎ、物狂ものくるざかで、朝となった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「むゝ、雨はんだ、けれどもおばあさんの姿は矢張やっぱり人間だよ。」と物狂ものくるはしく固唾かたずを飲んだ。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もう永久えいきゅうに、あの姿すがたられないとおもうと、ちょうは、また物狂ものくるおしく、昨日きのうのように、そらたかがったのです。うつくしい花弁かべんのようにきずついたちょうの姿すがたは、夕日ゆうひかがやきました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)