父様とうさん)” の例文
旧字:父樣
だからCさんがお父様とうさんの身のまわりの事から、お台所の事から、それに小さな弟さんの面倒まで、そりゃ行届いてなさるんですって。
大きな手 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
「参謀本部の翻訳をして、まだ学校なども独逸語を持っていますな——早瀬主税——と云う、あれは、貴娘の父様とうさんの弟子ですな。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(文造)坊つちやん、あなたはあなた一人の力で恋を獲ようとなさらないで、お父様とうさんの恩を云ひ出すなんて、そりや卑怯ぢやありませんか。
「僕、二三日前から、この事件について調べあげたノオトがありますから、それをすこし父様とうさんに、お話ししてみましょう!」
幽霊屋敷の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
母様かあさん姉様ねえさんのおうちが危いから行つて来ます。お父様とうさんももうおいでになつたのです。うちは大丈夫だから安心しておいで。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
聡明そうめいなお前が、そんな馬鹿なことを考える。お父様とうさんを救おうとして、お前があんな豚のような男に身をまかす。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
父様とうさんのアイチャンキャラ侯は、たつたひとりぽつちのニナール姫が、さびしいだらうと、従兄いとこに当るジウラ王子を蒙古から呼びよせ、そのお相手になさつたのです。
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
中学の門とはすに向ひ合つて、一軒の理髪床とこやがあつたが、其前で何日いつかしら菊池君を見た……否、アレは市役所の兵事係とか云ふ、同じクラスの友人のお父様とうさんの髭だつたと気がつく。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
狂風一陣こずゑをうごかしてきたる気の立つた折には、父様とうさん母様かあさん兄様にいさんも誰れも後生ごしよう顔を見せて下さるな、とて物陰にひそんで泣く、声ははらわたを絞り出すやうにて私が悪う御座りました
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ぼくには、何にもないや。おうちも、クリスマス・ツリーも、御馳走も。お父様とうさんも、お母様もないや、なんにも、ないや」
街の子 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
あの時も、父様とうさんは、東京の叔父さんだの、坂田(道学者)さんに応援して、火の出るように、敵と戦ったんだわ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ねえ父様とうさん、僕、一昨日おとといと昨日とまる二日、上野の図書館で調べたのですが、それによると、あの博士の殺された白堊館では、今度までにもう八人も人が殺されているんです。
幽霊屋敷の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「瑠璃さん! あなたは、今夜はうかしてゐる。お父様とうさんも、ゆつくり考へよう。あなたも、ゆつくりお考へなさい。あなたの考へは、余り突飛だ。そんな馬鹿なことが今時……」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
御承知の通りこの頃は世間がやかましいのんで迂濶うかつなことすると私一人やない、お宅の不名誉になるような事起らんとも限らんのんで、そうなったらお父様とうさんに対して申訳ありません。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
泣きながら寝入つたことがよくわかるのです。枕の前には硝子ガラスの箱にはひつた新しい玩具おもちやが置いてあるのです。花樹はなきもこれと同じのをお父様とうさんに買つて頂いて行つたのであらうと私は思ふのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
『お父様とうさんは今日も役場ですか?』と、信吾は縁側に立つて空を眺めた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、ぼくのお父様とうさんも大音楽家なんだ。おや、おや。ぼくのお父様は、会社へ出ているんだっけ
街の子 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
「瑠璃さん! あなたは、今夜はうかしている。お父様とうさんも、ゆっくり考えよう。あなたも、ゆっくりお考えなさい。あなたの考えは、余り突飛だ。そんな馬鹿なことが今時……」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
父様とうさん、とうとう事件は僕の出動を促してきましたよ。よろしい、通してくれ給え」
幽霊屋敷の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
(文造)結婚するツて、お父様とうさんやお母様かあさんは其れをお許しになるでせうか。
父様とうさんは、このの主人、早瀬主税には、先生で大恩人、且つ御主おしゅうに当る。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お父様とうさんのお花を切つてもいいのですか、あなたが。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
父様とうさんを救はうとして、お前があんな豚のやうな男に身を委す。考へるだけでも汚らはしいことだ! お前を犠牲にして、自分の難儀を助からうなどと、そんなさもしいことを考へる父だと思ふのか。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「しかし父様とうさん——」龍介が顔をあげて答えた。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)