熔岩ようがん)” の例文
つぎに見たのは、海底火山かいていかざんがふきだした熔岩ようがんでできた、ごつごつの島であった。島の根は、海中にするどくつき立って、あくまで、波と戦っていた。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
熔岩ようがんが海中へ流れ込んだ跡も通って行った。シャボテンやみかんのような木も見られた。粗末な泥土塗どろつちぬりの田舎家いなかやもイタリアと思えばおもしろかった。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その足もとから黄金色きんいろ熔岩ようがんがきらきら流れ出して、見るまにずうっと扇形にひろがりながら海へはいりました。
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
夾竹桃きょうちくとう枸櫞樹シトロン、たこの木、オレンジ。其等の樹々の円天井の下を暫く行くと、また水が無くなる。地下の熔岩ようがんの洞穴の廊下に潜り込むのだ。私は其の廊下の上を歩く。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その難場の谿底路を甚太郎は先へと辿って行く。行くに従って谿底路は次第次第に爪先上がりとなり、松やかえでが密生し熔岩ようがんの層は多くなり、随所に行手をさえぎるのである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
聖なる暗黒のうちには、実に潜在せる光明があったのである。火山が蔵する影のうちには、やがて炎々と輝き出すべき可能性がある。熔岩ようがんもすべてその初めは暗黒である。
その無気味な煙りの中には、ときどき稲妻いなづまのようなものが光っていた。その閃光せんこう熔岩ようがんと熔岩とがぶつかって発するものだということを、去年の夏、彼は人から聞いていた。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
七千人の旗営きえいが一瞬にどうかしてしまったとしか見えない。——どろどろと熔岩ようがんのような黒いものが、山の中腹から逃げまろび重なりあって、はるかふもとまで押し流れて行く。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雲消えて皹もまたぬぐひ去らる、山色何の瑠璃るりぞ、赭丹しやたん赭黄なる熔岩ようがんの、奇醜きしう大塊を、至つて無器用に束ねて嶄立ざんりつせるのみ、その肩を怒らし胸を張れるを見て、淑美しゆくびなる女性的崇高を知らず。
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
この人たちは、わたしの照りかがやく光の中で、墓の中からよみがえった都市を見ようと思ったのです。そこでわたしは、広い熔岩ようがんをしきつめた街路にのこっている車輪のあとを見せてやりました。
熔岩ようがんの上を跣足はだしの島男
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
今のはぼくらの足もとから、北へ一キロばかり、地表下七百メートルぐらいの所で、この小屋の六七十倍ぐらいの岩のかたまり熔岩ようがんの中へ落ち込んだらしいのだ。
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ただ彼は地下に空洞くうどうの存在を仮定し、その空洞を満たすに「風」をもってしたのは困るようであるが、この「風」を熔岩ようがんと翻訳すれば現在の考えに近くなる。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
郵便局といっても、船から上陸した人が、すぐ目につく場所にある、熔岩ようがんのわれめの上に、とくべつに大きなかめの甲羅をふせて屋根として、その下へ、あき箱でつくった郵便箱をおいたものだ。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
それから黄金きん色の熔岩ようがんがきらきらきらと流れ出して見る間にずっと扇形おうぎがたにひろがりました。見ていたものは
火山のすそ野でも、土地が灰砂でおおわれているか、熔岩ようがんを露出しているかによってまた噴出年代の新旧によってもおのずからフロラの分化を見せているようである。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
熔岩ようがんの用意っ。熔岩。早く。畜生。いつまでぐづぐづしてるんだ。熔岩、用意っ。もう二百万年たってるぞ。灰を降らせろ、灰を降らせろ。なぜ早く支度をしないか。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
どうしてそんな変なものができたといふなら、そいつはけだし簡単だ。えゝ、こゝに一つの火山がある。熔岩ようがんを流す。その熔岩は地殻の深いところから太い棒になってのぼって来る。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
どうしてそんな変なものができたというなら、そいつはけだし簡単だ。ええ、ここに一つの火山がある。熔岩ようがんを流す。その熔岩は地殻の深いところから太い棒になってのぼって来る。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あすこには熔岩ようがんの層が二つしかない。あとは柔らかな火山灰と火山礫かざんれきの層だ。それにあすこまでは牧場の道も立派にあるから、材料を運ぶことも造作ぞうさない。ぼくは工作隊を申請しよう。」
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
またくなったわし大臣だいじんっていた時は、大噴火だいふんかがあって大臣だいじんが鳥の避難ひなんのために、あちこちさしずをして歩いている間に、この玉が山ほどある石にたれたり、まっかな熔岩ようがんながされたりしても
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
熔岩ようがん、用意っ。灰をふらせろ、えい、畜生、何だ、野火か。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
熔岩ようがん、用意っ。灰をふらせろ、えい、畜生ちくしょう、何だ、野火か。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
黄金きん熔岩ようがん、まっ黒なけむり。