烈日れつじつ)” の例文
手の裏かへす無情さは、足も手もぐたりとした、烈日れつじつに裂けかゝる氷のやうな練絹ねりぎぬの、紫玉の、ふくよかな胸を、酒焼さかやけの胸に引掴ひっつかみ、毛脛けずねに挟んで
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
爾の手足は松のはだの如く荒るゝ共、爾の筋骨は鋼鉄を欺く。烈日れつじつもとに滝なす汗を流す共、野の風はヨリ涼しく爾を吹く。爾は麦飯むぎめしを食うも、夜毎に快眠を与えられる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
浮世絵は概して奉書ほうしょまたは西之内にしのうちに印刷せられ、その色彩は皆めたる如くあわくして光沢なし、試みにこれを活気ある油画あぶらえの色と比較せば、一ツは赫々かくかくたる烈日れつじつの光を望むが如く
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
烈日れつじつあつさを天のあなどりのごとく耐へつつ
烈日れつじつの下に不思議の露を見し
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
時鳥ほとゝぎす矢信やぶみ、さゝがに緋縅ひをどしこそ、くれなゐいろにはづれ、たゞ暗夜やみわびしきに、烈日れつじつたちまごとく、まどはなふすまひらけるゆふべ紫陽花あぢさゐはな花片はなびら一枚ひとつづゝ、くもほしうつをりよ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)