激昂げきかう)” の例文
カン蛙は、野鼠の激昂げきかうのあんまりひどいのに、しばらくはあきれてゐましたが、なるほど考へて見ると、それも無理はありませんでした。
蛙のゴム靴 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「さうですわね——『人生の激しい激昂げきかうの後、彼等はよく眠つてゐる』」と私は呟いた。「あら、何處へいらつしやいますの、フェアファックス夫人?」
田村は此事件の主任のやうなものであつた。国民は激昂げきかうして弁護人たる田村や金山にあてて、「逆徒の弁護をするなら首がないぞ」と云ふ様な投書をいくらもつきつけた。
畜生道 (新字旧仮名) / 平出修(著)
左様さうだ/\、がうも疑ふ所は無い」と松本は愈々いよ/\激昂げきかうしつ「現に今度の九州炭山の一件でも知ることが出来る、本来ならば篠田が自身に出掛けておほい煽動せんどうせにやならないのだ、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
伊藤公追弔演説會以來のひと激昂げきかうを思はずまた參禪論に於いてした爲め、神經が再び非常に過敏になつてゐるのが、今、路上の放浪者として、初冬はつふゆのしめツぽさと冷氣とに當つて
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
かれ其後そのご病院びやうゐんに二イワン、デミトリチをたづねたのでるがイワン、デミトリチは二ながら非常ひじやう興奮こうふんして、激昂げきかうしてゐた樣子やうすで、饒舌しやべことはもうきたとつてかれ拒絶きよぜつする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と何か別の事でも非常に激昂げきかうして居るらしい心を、彼の犬の方へうつして、ヒステリカルな声で散々に吐鳴どなり立てた。その声が自分の家のなかで坐つて居る彼の耳にまで聞えて来た。
感情の激昂げきかうから彼の胸は大波のやうに高低して、喉は笛のやうに鳴るかと思ふ程かわき果て、耳を聾返つんぼがへらすばかりな内部の噪音さうおんはゞまれて、子供の声などは一語も聞こえはしなかつた。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
與之松はすつかり激昂げきかうして、平次へ喰つてかゝりさうな氣勢を見せるのでした。
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
いづれも火の母屋おもやに移らぬ事を祝しては居るが、連夜の騒動に、夜は大分眠らぬ疲労つかれと、烈しく激昂げきかうした一種の殺気とが加はつて、の顔を見ても、不穏な落付かぬすごい色を帯びて居らぬものは
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)