きよら)” の例文
片隅かたすみ外套がいとうを脱捨つれば、彼は黒綾くろあやのモオニングのあたらしからぬに、濃納戸地こいなんどじ黒縞くろじま穿袴ズボンゆたかなるを着けて、きよらならぬ護謨ゴムのカラ、カフ、鼠色ねずみいろ紋繻子もんじゆす頸飾えりかざりしたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一 身のかざりも衣裳の染色模様なども目にたゝぬ様にすべし。身と衣服とのけがれずしてきよげなるはよし。すぐれきよらを尽し人の目に立つ程なるはあしし。只我身に応じたるを用べし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
常に飄然ひようぜんとして、絶えて貴族的容儀を修めざれど、おのづからなる七万石の品格は、面白おもてしろ眉秀まゆひいでて、鼻高く、眼爽まなこさはやかに、かたちきよらあがれるは、こうとして玉樹ぎよくじゆの風前に臨めるともふべくや
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お峯は苦笑にがわらひしつ。あきらかなる障子の日脚ひざしはそのおもて小皺こじわの読まれぬは無きまでに照しぬ。髪は薄けれど、くしの歯通りて、一髪いつぱつを乱さず円髷まるわげに結ひて顔の色は赤きかたなれど、いと好くみがきてきよらなめらかなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)