淡紅うすあか)” の例文
淡紅うすあかい顔をしたその西洋人が帰って来ると、お島さんもどこからか現われて来て、自堕落じだらくだるい風をしながら、コーヒを運びなどしていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
歩いて須磨へ行く途中、男がざるに石竹せきちくを入れて往来を来るのに出遇った。見たことのないような、小さな、淡紅うすあかい可愛らしい花が咲いていた。
舞子より須磨へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
根岸の姉さんがお節のために見立てゝ呉れた流行帯揚おびあげ淡紅うすあかな色ばかりでも、妹をうらやませるには十分であつた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
大理石色なめいしいろ薔薇ばらの花、あかく、また淡紅うすあかじゆくして今にもけさうな大理石色なめいしいろ薔薇ばらの花、おまへはごく内證ないしよ花瓣はなびらの裏をみせてくれる、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
湿地の棒杭の腐れから生える、あの淡紅うすあかい毒茸のような生存から、何時の日彼女等は救われるだろう——。
日本の十畳敷ばかりの所に赤い絨氈じうたんを敷き詰めて、淡紅うすあかい羽蒲団の掛つた二人寝の大きな寝台ねだいを据ゑ、幾つかの額と二つの大きな鏡の懸つたなり立派な部屋だが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
苜蓿によく似た葉で、淡紅うすあか色の可愛かあいらしい花をもつ花酢漿はなかたばみも京都にはよく見かける。
我がかた淡紅うすあかき、白き
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
鏡を離れた葉子はしろしろしたほお淡紅うすあかい紅を差して、昨夜の泣きれた顔とは、まるで見違えるようになっていたが、額に悲痛な曇りを帯びていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
西の雲間に、河岸並かしなみに、きんの入日がぱつとして、群集ぐんじゆうへに、淡紅うすあかの光の波のてりかへし。今シァアトレエの廣場ひろばには、人の出さかり、馬車がをどれば電車が滑る。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
どの運河カナルの水も鏡のやうに明るくてゐどのやうに深く、その上に黄いろくんだ並木や、淡紅うすあかく塗つた家の壁や、いろいろにいろどつた荷船にぶねやが静かに映つて居るのを見ると
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)