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淡墨
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うすずみ
ふりがな文庫
“
淡墨
(
うすずみ
)” の例文
窓越しに、
淡墨
(
うすずみ
)
をふくんだ瑠璃の夕空が重く淀んでをり、すこしも風の気とてない蒸暑く鬱滞した陋巷の空気が泥水のやうに動かずにゐた。
薄暮の貌
(新字旧仮名)
/
飯田蛇笏
(著)
初秋に出る掛物は常に
近松
(
ちかまつ
)
の自画自讃ときまっていた。それは鼠色の紙面へ
淡墨
(
うすずみ
)
を以て
団扇
(
うちわ
)
を持てる女の夕涼みの略図に俳句が添えてあった。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
七日ばかりの
仄
(
ほの
)
かな夕月は、その少し前頃から
淡墨
(
うすずみ
)
の如意輪寺の
甍
(
いらか
)
を越して、立ち迷う夕霞の世界へ青銀色の光の雨を投げ交ぜて、春の
朧夜
(
おぼろよ
)
を整えはじめた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と見れば、比良ヶ岳、
比叡山
(
ひえいざん
)
の上に、真黒な雲がかぶさり、さしも晴れやかに光っていた琵琶湖の湖面が、
淡墨
(
うすずみ
)
を流したように
黝
(
くろ
)
ずんできたのを認めました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
窓のつい眼のさきにある山の姿が、
淡墨
(
うすずみ
)
で
刷
(
は
)
いたように、水霧に
裹
(
つつ
)
まれて、
目近
(
まぢか
)
の雑木の小枝や、崖の草の葉などに漂うている雲が、しぶきのような水滴を
滴垂
(
したた
)
らしていたりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
□夕方西に
紅
(
くれない
)
の
細
(
ほそ
)
き雲
棚引
(
たなび
)
き、
上
(
のぼ
)
るほど、うす紫より終に
淡墨
(
うすずみ
)
に、下に秩父の山黒々とうつくしけれど、そは光あり力あるそれにはあらで、冬の雲は寒く寂しき、
例
(
たと
)
へんに恋にやぶれ
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
春雨
(
はるさめ
)
の明けの朝、
秋霧
(
あきぎり
)
の夕、此杉の森の
梢
(
こずえ
)
がミレージの様に
靄
(
もや
)
から浮いて出たり、棚引く煙を
紗
(
しゃ
)
の帯の如く
纏
(
まと
)
うて見たり、しぶく小雨に見る/\
淡墨
(
うすずみ
)
の画になったり、梅雨には
梟
(
ふくろう
)
の宿
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
白昼
(
ひるま
)
を欺くばかりなりし公園内の
万燈
(
まんどう
)
は全く消えて、
雨催
(
あまもよい
)
の
天
(
そら
)
に月はあれども、四面
滃※
(
おうぼつ
)
として
煙
(
けぶり
)
の
布
(
し
)
くがごとく、
淡墨
(
うすずみ
)
を流せる森のかなたに、たちまち
跫音
(
あしおと
)
の響きて、がやがやと
罵
(
ののし
)
る声せるは
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ひろい池の水面が、冬の暖かい午後の陽にきらめいていて、蓮の、枯れてしおれた葉を付けたものや、二つに折れたものが、そのきらめく水面に、
淡墨
(
うすずみ
)
で描いたような、複雑な模様を映していた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
こきものは
淡墨
(
うすずみ
)
となり、うすきものは
白絹
(
しらぎぬ
)
となり、
疾
(
と
)
きものはせつなの光となり、ゆるきものは雲の尾にまぎれる、
巻々舒々
(
かんかんじょじょ
)
、あるいは
合
(
がっ
)
し、あるいははなれ、
呼吸
(
いき
)
がつまりそうな霧のしぶきとなり
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
桜花
(
はな
)
の山は
淡墨
(
うすずみ
)
いろに暮れにけり
大烏
(
おほがらす
)
一羽ひつそり帰る
桜
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
絵を線描のみでなく
淡墨
(
うすずみ
)
を以て調子づけたりする事も結構だが、どうも鮮明を欠く嫌いがある。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
絵を線描のみでなく
淡墨
(
うすずみ
)
を以て調子づけたりする事も結構だが、どうも鮮明を欠く嫌いがある。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
淡
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
墨
常用漢字
中学
部首:⼟
14画
“淡墨”で始まる語句
淡墨色