淀橋よどばし)” の例文
淀橋よどばし区、四谷よつや区は、大半焼け尽しました。品川しながわ区、荏原えばら区は、目下もっか延焼中えんしょうちゅうであります。下町したまち方面は、むしろ、小康状態に入りました」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
戸若は千番トラックのギャレジの二階に寝泊りしていたが、蟹口は、淀橋よどばしで煙草店を出している妻女ツル子(二十五)の処から通勤していた。
衝突心理 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
淀橋よどばしへ來るとおそくなつてしまひ、掛を集めて大金を持つてゐるので、夜道は物騷だから、淀橋の叶屋かなふやで泊つて、がらにもなく一杯呑んでぐつすり寢込んでしまつて
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
神田・同朋町どうぼうちょう。さらに晩秋には、神田・和泉町いずみちょう。その翌年の早春に、淀橋よどばし柏木かしわぎ。なんの語るべき事も無い。朱麟堂しゅりんどうと号して俳句に凝ったりしていた。老人である。
それが女と解つたのは、せん女さんがある日の事、淀橋よどばしに俳人長谷川零余子を訪ねてからで
淀橋よどばしへ移転してから家が近くなったので頻繁ひんぱんに来た。思想上の話もしたし、社会主義の話もしたが、肝胆相照らしたというわけでもないから多くは文壇や世間のうわさばなしだった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
……あかいとで、あししるしをつけた幾疋いくひきかを、とほ淀橋よどばしはうみづはなしたが、三日みつか四日よつかごろから、をつけて、もとのいけおもうかゞふと、あしいとむすんだのがちら/\る。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ヤ、君、最早もう一時だ」と阪井は時計を手にしながら「れから淀橋よどばしまで歩るくのか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そしてその日の夕刊に淀橋よどばし近くの水道の溝渠こうきょがくずれて付近が洪水こうずいのようになり、そのために東京全市が断水に会う恐れがあるので、今大急ぎで応急工事をやっているという記事が出た。
断水の日 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
但馬さんとも相談して、私は、ほとんど身一つで、あなたのところへ参りました。淀橋よどばしのアパートで暮した二年ほど、私にとって楽しい月日つきひは、ありませんでした。
きりぎりす (新字新仮名) / 太宰治(著)
こんな大きな事を言ひ乍ら、平次と寅吉はつい淀橋よどばしの近所の寅吉の家へ引揚げました。
淀橋よどばしの、兄さんのところへ、マスクを持ってゆくんです」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
淀橋よどばしにゐる筈の金之助が、どうして下谷で人殺しをしたんでせう」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)