)” の例文
ざぶり水をけながら、見るともなしに、小窓の格子から田圃たんぼを見ると、月はの棟に上ったろう、影は見えぬが青田の白さ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのうち湯が沸騰わいて来たから例の通り氷のようにひえた飯へ白湯さゆけて沢庵たくあんをバリバリ、待ち兼た風に食い初めた。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
油をけ、駒下駄こまげたを片手にげ、表の戸を半分明け、身体をなかば表へ出して置いて、手らんぷを死骸の上へほうり付けますと、見る/\内にぽっ/\と燃上もえあが
肉色の薔薇ばらの花、さも丈夫らしい、けた薔薇ばらの花、肉色の薔薇ばらの花、おまへは、わたしたちにあかい弱い葡萄酒ぶだうしゆけて誘惑する、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「ちょ! どうなるものか」と言いさまザブリと盤台へ水をけて、「こう三公、掃除が済んだら手前もここへ来や。早く片づけて、明るいうちに湯へ行くべえ」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
肝心の時は逃げ出して今ごろ十兵衛が周囲まわりありのようにたかって何の役に立つ、馬鹿ども、こっちには亡者もうじゃができかかって居るのだ、鈍遅どじめ、水でも汲んで来て打っけてやれい
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そ、その鉢にゃ水があればいがね、無くば座敷まで我慢さっせえまし、土瓶ののこりけて進ぜる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)