くん)” の例文
くんで持ち出で傳吉の足をあら行燈あんどうさげ先に立ち座敷へ伴ひ木枕きまくらを出しちと寢轉ねころび給へとて娘は勝手へ立ち行き半時ばかり出で來らず傳吉はかしらめぐら家内かないの樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
梅月で誰かにくんで遣った湯の返しのなかった事、常磐屋ときわやで大臣さんにお目に懸った事、船で花見の約束に行った事、こちらのからもしきりに笑い声が漏れるようになったが
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
藤原が提灯を持ちましてそでに隠し、燈火の隙間すきまから井戸端いどばたを見ますると、おなみ単物ひとえもの一枚にたすきを掛け、どんどん水をくんでは夫國藏くにぞうに浴せて居ります。國藏は一心不乱にまなこを閉じ合掌して
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
饒舌しゃべりながら母親がくんで出す茶碗ちゃわんはばかりとも言わずに受取りて、一口飲で下へ差措さしおいたまま、済まアし切ッてまたふたたび読みさした雑誌を取り上げてながめ詰めた、昇と同席の時は何時でもこうで。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
幅のせばい帯を締めて姉様あねさまを荷厄介やっかいにしていたなれど、こましゃくれた心から、「あの人はお前の御亭主さんにもらッたのだヨ」ト坐興に言ッた言葉の露をまことくんだか、初の内ははにかんでばかりいたが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
くんで差出す其待遇體そのもてなしぶりの念頃なるに友次郎も心落付おちつきしばらく息を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)