気合きあい)” の例文
旧字:氣合
昔から、「鳥類を制するのは人間の気合きあいひとつにある。そして妻を制するのは、その夫の雄々しくしっかりした気性ひとつにある」
一 女をくどくや先づ小当こあたりに当つて見て駄目らしければ退いて様子をうかが気合きあい、これ己を知るものなり。文芸の道また色道に異るなし。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
または空気を主にしてそのうちに色と物とを織り出すか。画は少しの気合きあい一つでいろいろな調子が出る。この調子は画家自身の嗜好しこうで異なってくる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、糸は糸、造酒が刀を引くが早いか、フッツリ切れたが、こういう些細ささいな邪魔でも、馬の眼を羽毛うもうが掠めたようなもので、気合きあいである。はずみである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たすき鉢巻はちまき股立ももだち取って、満身に力瘤ちからこぶを入れつつ起上たちあがって、右からも左からも打込むすきがない身構えをしてから、えいやッと気合きあいを掛けて打込む命掛けの勝負であった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
呪文じゅもんはわからないが、腰の棒切れをぬき、一念こめて、エエイッと気合きあいを入れて虚空こくうへ投げる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一番長い気合きあいのかけ合いはこの時だったかと覚えて居りまする。しかし数馬は相手の竹刀へ竹刀をれたと思うが早いか、いきなりつきを入れました。突はしたたかにはいりました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「さあ、たしかにこっちの箱には、世界一のかしこい鳩がはいり、こっちの箱には、かわいいお嬢さんがはいりました。ところが、私が気合きあいをかけますと、ふしぎなことがおこります」
電気鳩 (新字新仮名) / 海野十三(著)
合気の術は剣客武芸者等の我が神威を以て敵の意気をくじくので、鍛錬した我が気のさえを微妙の機によって敵に徹するのである。正木まさき気合きあいはなしを考えて、それが如何なるものかをさいすることが出来る。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
洒落しゃらくでありながら神経質に生れついた彼の気合きあいをよく呑み込んで、その両面に行き渡った自分の行動を、寸分たがわず叔父の思い通りに楽々と運んで行く彼女には
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
帆村は、気合きあいをかけると
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
双方に気合きあいがないから、もう画としては、支離滅裂しりめつれつである。雑木林ぞうきばやしの入口で男は一度振り返った。女はあとをも見ぬ。すらすらと、こちらへ歩行あるいてくる。やがて余の真正面ましょうめんまで来て
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)